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聖地・熊野と世界遺産 宗教・観光・国土開発の社会学…田中滋・寺田憲弘編著

2021年4月2日 13時21分
聖地・熊野と世界遺産 宗教・観光・国土開発の社会学

紀伊半島の熊野地方は古代以来の霊地で、「蟻の熊野詣」という言葉が示すように多くの巡礼者を引き寄せた。近代に入ってやや衰退したが、2004年のユネスコ世界遺産登録で再び脚光を浴び、ツーリズムや自然開発に伴う問題も浮上してきた。

本書は田中滋・龍谷大名誉教授を中心とする研究グループが03年から19年にかけて行った熊野地方の社会調査の成果。第1部「激動の近代――廃仏毀釈の嵐から近代観光と電源開発へ」、第2部「問い直される近代――世界遺産化と地域社会の変貌」の2部構成で、序章を含め論文14篇を収める。

第1部では熊野の自然開発とそれに伴う地域の変化が社会学的に分析され、第2部では世界遺産登録後の様々な反応が取り上げられる。「国民の均質化」を意味する明治以降のナショナリゼーションと、近年著しいグローバリゼーションが全体を通してのキーワードになる。

明治政府の神仏分離、国家神道政策のもと変質した熊野の宗教文化は、いま観光立国という国策、地域活性化の枠組み、世界遺産の新たな文脈の中で位置付けられている。本書では近代国家で負の評価が与えられてきた修験道の「観光資源化」、ツーリズムと信仰の価値の問題なども論じられている。

定価3520円、晃洋書房(電話075・312・0788)刊。

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