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近世の天台宗と延暦寺…藤田和敏著

2021年4月9日 13時26分
近世の天台宗と延暦寺

叡山文庫(大津市)に所蔵されている近世の膨大な延暦寺文書を読み解きながら、近世天台宗と延暦寺の実像を明らかにした。

1571(元亀2)年の織田信長による焼き打ちで延暦寺は全山が焼失し、その後に再建が進むも慢性的な財政難に陥った。天台宗統制のため、江戸幕府が擁立した輪王寺宮(寛永寺・輪王寺住職を兼帯)の支配に従属し、宗内における延暦寺の立場は苦しいものになった。

同書によると、延暦寺は財政窮乏を補うために、仏教の論理で仏と神を一体化する神仏習合の形態で祭礼を営んだ地方の神宮寺との密教による師弟関係を積極的に活用した。神宮寺では雨乞いなどの祈祷を神社の祭礼として行うが、その住職が祈祷を執行するには、師僧から密教の伝法灌頂を受けて阿闍梨の僧位を得ることが必要だった。

師弟関係を結ぶことで延暦寺は有力寺院が多い各地の神宮寺を傘下に収め、財政維持に役立てたが、明治維新の神仏分離政策で一変。全国の神宮寺が破壊されたため、延暦寺は自らを成り立たせる基盤を失った。

歴史学的に天台宗の教団組織を分析した内容が中心だが、日本社会の特質ともいえる神仏習合の解明に資する研究としても意義深い論考となっている。

定価3850円、法藏館(電話075・343・5656)刊。

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