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神智学と仏教…吉永進一著

2021年10月4日 09時43分
神智学と仏教

近代仏教史のこれまでの研究では、肉体を超えた霊的な世界への理解や、他者の健康を治したりする呪術的な実践などの「霊」と「術」の観点に、ほとんど光が当てられてこなかった。著者は近代日本の仏教者が神智学やスウェーデンボルグ思想とどう関わり、仏教復興に利用したかなどを論じている。

神智学協会は1875年に米国ニューヨークで結成され、インドに本部を移転して国際的組織に成長。内実は西洋オカルティズムと東洋宗教の寄せ集めとも指摘されるが、欧米人の東洋宗教への入り口の役割を果たした。

創立者のオルコットが1889(明治22)年に来日したことは、メディアを賑わす事件となった。当時は欧化政策の反動で破邪顕正運動と呼ばれる反キリスト教運動が盛んであり、一方で各宗派が講演活動を経済的に支援したためである。ただし日本仏教側は、オルコットの思想より「欧米仏教徒」の存在を利用して仏教が文明的宗教だと国民に印象づける狙いがあったため、神智学そのものは議論されず「忘却された」としている。

鈴木大拙が大正時代、他界の存在が否定された近代社会の中でいかに救済を得ることが可能かを自問し、神秘家・スウェーデンボルグを創造的に解釈した点も興味深い。解題を碧海寿広・武蔵野大准教授が執筆している。

定価4400円、法藏館(電話075・343・5656)刊。

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