廣澤隆之選集 第一巻 自然ということ1…廣澤隆之著

大乗仏教の教理哲学的研究を専門としながらも、西洋思想や宗教哲学、アジアの文化史など幅広い見識に富む著者による随想や論考をまとめた。全10巻に161編の文章を収録している。
学術的な論文と平易な随想を区別せず、テーマごとに分類。随想の中に学術的考察を見いだすことができ、著者の思索のプロセスが示唆されている。各巻のテーマは1、2巻=自然ということ▽3、4巻=体験とことば▽5、6巻=文明・文化への視座▽7、8巻=神秘と祈り▽9巻=仏教学を超えて▽10巻=別巻(法話集)。
真言密教の教理をはじめ、平等・差別、自然、葬儀、あるいは日々の生活の中で感じる季節など多種多様な話題を縦横無尽に軽妙な筆致と深い思索で語っている。
第1巻では、コスモロジーや自然などの概念が仏教においても適用するのか、検証しながら弘法大師の自然観を探る。
文献学的な手法を重視した近代仏教学、近代の西洋で培われた思想を投射し、仏教思想を捉える現代の仏教界に警鐘を鳴らす。学者であり僧侶である著者は、文献学的研究の対象ではなく、自身の思想の問題として仏教と向き合ってきた。「仏教とは何か」との問いを探究し続けてきた真言宗僧侶の集成。
各冊定価4400円、同朋舎新社(電話03・6256・8917)刊。