仏教のことば・考え方…ひろさちや著

1979年に刊行された著者の「記念碑的著作」を復刊した。著者が目指すのは「仏教のことばを手がかりにして、仏教の考え方を明らかにすること」。一般の人々にも仏教が持つ難解な考え方を理解できるよう、仏教語ではなく平易な表現による解説を一貫して試みている。この狙いを反映するように、本書は「どう生きればよいか」という人々の現実に即した問いを常に念頭に置いている。
取り扱うのは「輪廻転生」「中道」「解脱」など、いずれも仏教では基本的かつ重要なテーマだ。各テーマに関連する仏教語や概念の説明を交えつつ、ブッダの生涯を含む古今東西のエピソードを例に解説。登場する人物や状況は人間味のあるものが多く、読者の理解を助けながら、仏教の考え方と読者の生活を乖離させない役割を果たしている。
各テーマを結ぶ最終章で、著者は自身を「前仏教徒」、すなわち努力を続けてこれから「仏教徒になる」者であると自称する。自分の信心だけが仏教の全てではなく、他人に押し付けられるものでもない。また自分の信心を信じ込み、その中に安住することは人を傲慢に陥らせる。常にこの2点に留意し、自分の信心におごることなく不断の努力を続ける――この態度こそ、真の仏教者と呼ぶにふさわしいと著者は強調している。
定価1980円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。