修験道 日本の諸宗教との習合…宮家準著

1996年に発行され、版を重ねた『修験道と日本宗教』を加筆修正した増補決定版。序文だけでも古代から現代に至る修験道の変遷が要点を絞って略述され、天台宗や真言宗との関わり、本山派・当山派の修験道教団の成立、神仏分離令・修験道廃止令の衝撃などの重要な諸問題について通覧できる。
著者は「諸宗教を習合させた形で常民の間に浸透している宗教」を民俗宗教と呼び、修験道をその典型だと規定する。「文化庁の宗務課ではこの修験道を仏教に所属させているが、実際には古来の山岳信仰、シャーマニズム、神道、仏教、道教、儒教、陰陽道などが習合した宗教である」と述べ、この観点は修験道に限定されることではないと指摘するが、教団行政の現場やその周辺にいる者にも忘れてはならない視点といえる。
中世の仏教霊山と修験霊山の相違の考察が興味深い。第一に本尊について仏教霊山では仏菩薩とするが、修験霊山では金剛蔵王権現や熊野十二所権現のような山の神が示現した権現で、「のちにその本地として仏菩薩が充当された」とする。第二に組織運営が仏教霊山では学侶が主導権を握っていたのに対し、修験霊山では行人層が中心だったと述べる。
著者の数十年の研究を反映させた修験道の概説書の新たなスタンダードになるだろう。
定価3300円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。