真言秘密瑜伽…羽毛田義人著

コロンビア大で教壇に立った羽毛田義人氏の著作が約半世紀ぶりに復刊された。本書で羽毛田氏は、日本の真言秘密仏教の特色の一つは師資相承であり、万巻の書を読んでも法の本質に触れることはないと断言する。冒頭で空海晩年の大著『秘蔵宝鑰』の巻頭詩を引き「瑜伽三摩地の実践を抜きにしては真言秘密仏教は机上の空論、観念の遊戯にしか過ぎないと宣言しているように思える」と記す。
2部構成で第1部「真言秘密瑜伽の原始体験」では、秘密瑜伽の実践という観点から、宗祖大師の生涯を振り返った。
第2部では『即身成仏義』などの空海の主著を資料とし、真言秘密瑜伽行者の心的態度を規定する三昧耶戒について考察した。
真言僧である羽毛田氏は高野山大文学部西洋哲学科を卒業後、1952(昭和27)年に高野山大海外研修生として渡米し、高野山米国別院で法務に当たった。月輪観や五相成身観をよく実修したという。自身の実修に基づいて、宗祖の詩文を読み解いた。
1975年に大東出版社が発刊した『現代密教講座』第4巻〈行道篇Ⅰ〉から「真言秘密瑜伽」を採録した。編集部は「同書が米国での研鑽の優れた成果。真摯に密教の道を歩もうと志す者が何をすべきかという示唆に満ちている」とし、一読を勧めている。
定価5500円、密門会出版部(電話03・3351・7281)刊。