神道文化の展開…村山修一著

神仏習合や陰陽道の先駆的研究で知られた歴史学者の村山修一氏(1914~2010)の未刊論文24本を収録し、同氏の「知られざる未見の学問世界」を紹介する。
30冊以上の単著にも収録されなかった論文の大半が神道をテーマとしたもので、他の3割が神仏習合などだった。編者の嵯峨井建氏は「神道がこれほどウエイトを占めていたことは極めて興味深いことである」と驚きを込めて記している。
1948年度人文科学研究費の交付を受け学界で初めて「神像美術」という概念を提起していたのは従来知られていないことだったという。その成果が1951年の論文「日本神像美術の研究」で、古代における霊魂の美的表現を継承しつつも、神像は仏教美術の一変形として成立発展したと位置付ける。写実性、神性、性別・年齢の表現などに触れ「最高潮に達した神像の写実性が人間的な美しさを理想としながら、神の有する由縁・縁起を体現することが少い点に注意したい」と指摘。「日本人は説明的なものによって写実性が余りに人間的な表現を強め、神性を失うことを畏れたのである」と分析する。
神木、寺社勧進、吉田神道、大元宮、御子神信仰、新義真言宗における神祇思想、三輪流神道、羽黒山に関する論考も収める。
定価1万4300円、塙書房(電話03・3812・5821)刊。