おうちで禅…花岡博芳著 川口澄子画

「仏教や禅は、なくても生きられるかもしれない。でもあった方が、人が人らしく生きられるのではないか」。そんなメッセージを大上段に構えて教えを説くのではなく、読者に寄り添うように暮らしの中から語る。
ご飯を炊き忘れた朝、檀家さんの遺族に投げてしまった失言など、著者は失敗する自らの姿をさらしながら、日々の出来事の中で見いだすことができる禅の教えを丁寧に言葉にしていく。身近な事例や日常の中で感じたことをつづる一方で、様々な禅籍、文学、音楽を用いながら、縦横無尽に禅の教えを語る。巻末には各章の参考文献を掲載している。
本書の在り方を象徴する言葉が「はじめに」で取り上げられている。唐の禅僧・永嘉玄覚の『証道歌』の一節「行亦禅 坐亦禅/語黙動静体安然」。著者は「静かに坐ることだけが禅ではなく、行動することもまた禅である。黙っているとき、動いているとき、休んでいるとき、すべてが禅である」と訳す。5章で構成される本書の章立ては、その言葉を借りて「行く」「坐る」「語る」「黙る」「悠々と」と名付けられた。
大法輪閣刊行の月刊『大法輪』で2014年から20年まで隔月連載された「暮らしに生かす禅ライフのすすめ」を加筆修正し新たに書き下ろしを加えた。
定価1980円、春陽堂書店(電話03・6264・0855)刊。