金峯山寺の365日…五條永教著 保山耕一映像

美しい写真や付属DVDの映像と共に奈良の古刹の魅力をその寺に奉仕する一僧侶の視点からつづる「某寺の365日」シリーズの第2弾。若手ながら金峯山修験本宗総本山の執行長の重責を担う著者が「日本一の桜の名所」とされる霊地吉野山の風土や修験道に生きる日常を紹介する。映像はテレビ番組「情熱大陸」や「THE世界遺産」に関わり、奈良県を拠点に活動する映像作家の保山耕一氏が撮影した。
執行長としての一日の仕事・勤行、「福は内、鬼も内」の節分会・蛙飛び行事など独特の年中行事はもちろん、大峯百日回峯行・大峯奥駈修行などの厳しい修行での不思議な経験、在家仏教である修験道の僧侶の在り方についても、教えを交えながら優しい語り口で思いを込める。
たわいもないが当事者でないと分からない逸話が面白い。剃髪する僧侶には不要なはずのくしが修験道の僧侶には欠かせない道具となっている理由、お勧めの金峯山寺の絶景の場所とタイミング、「ちょっと大きすぎ」の吉野山のあるもの、金峯山寺と黄檗宗の意外な縁なども記す。著者の人柄がそのままにじみ出たような文体で、わざわざ冗談や皮肉を使わなくても聞き手が自然と笑顔になる話しぶりが活字で再現されている。
定価1870円、西日本出版社(電話06・6338・3078)刊。