目覚めるアメリカ仏教 現代仏教の新しい未来像…ケネス・タナカ著

「西洋の壁」を超えて拡大するアメリカ仏教の実像に迫る。アメリカにおける仏教の歴史とその思想的特徴、科学や心理学との関わり、問題点などを多角的に考察している。
1970年代に約20万人だったアメリカの仏教徒は、その後の50年で約330万人にまで増加、数十年後にはユダヤ教を追い抜きアメリカ第二の宗教になる勢いだ。さらに、キリスト教やユダヤ教を信仰しつつも仏教に共感を覚えるという人や、仏教から思想的な影響を受けていると自認する人は推定で約3千万人に及ぶという。俳優のリチャード・ギア氏や歌手のティナ・ターナー氏も仏教からの影響を公言している。
アメリカに仏教が広がる契機になったのは1893年にシカゴで開かれた万国宗教会議である。この会議には、臨済宗の釈宗演、真言宗の土宜法龍といった日本人僧侶も参加した。
アメリカでの布教活動で成功を収めた日本人の多くは、本国で「異端」とされた僧侶たちである。彼らは旧来の伝統を保持しつつも、現代社会に合わせて積極的に思想改革を展開した。筆者は「現代仏教を新しい視点から考え、改革を目指す人々にとってアメリカ仏教は参照するに値する貴重な例なのではないか」と語る。
定価2530円、武蔵野大学出版会(電話042・468・3003)刊。