現代社会を宗教文化で読み解く -比較と歴史からの接近…櫻井義秀・平藤喜久子編著

宗教の定義は様々で、しかも伝統宗教の弱体化とともに、宗教と非宗教の境界も見えにくくなっている。現代の社会現象の多くに宗教文化が関わっているといわれても、すぐにピンとこない人もいるだろう。
本書では宗教文化の観点から次の10のテーマが論じられる。①日本の神々はどう描かれてきたのか②葬式仏教の時代は終わったか③宗教は性別を問わないか④宗教は自分らしさを奪うか⑤宗教は会社に指針を与えるか⑥宗教と世俗はどう共存しているか⑦宗教とツーリズムはなぜ結びつくのか⑧キリスト教は社会運動をなぜ支援するのか⑨カルト宗教はなにが問題なのか⑩宗教文化をどう捉えなおすか。
章題がそれぞれ読者への問い掛けになるようにしたのは編集上の工夫。章ごとに内容のポイントを簡潔にまとめ、読解のためキーワードを付した。また、注や引用・参考文献以外に「読書案内」も付して、テーマの深掘りをガイドする。
井上順孝・國學院大名誉教授が担当した最終章はダーウィン進化論や脳神経科学などの影響も受けた「認知宗教学」と総称できる新しい宗教へのアプローチを扱う。宗教を特別な領域の現象とは見ず、普遍的な基盤から人の宗教行動、宗教文化の理解を深める。
定価3300円、ミネルヴァ書房(電話075・581・5191)刊。