温良にして厳正 良寛さん ~幸せに生きる心~…中川幸次著

寺を持たず、遊行や托鉢を通して仏教と向き合い続けた江戸時代の禅僧・良寛の生涯から幸せに生きるヒントを探ろうとする一冊。良寛ゆかりの地を50年にわたって調査し続けた著者が、彼の遺した詩や師から受けた印可の偈、『良寛禅師奇話』などの史料から思想や人間性に迫る。
良寛は1758年、越後国出雲崎の名主・山本家の長子として生まれた。11歳で大森子陽の狹川塾に入る。漢詩や漢学を学び、18歳で名主見習いとなるも、同年に突如として出家。33歳で曹洞宗円通寺の大忍国仙和尚より印可を賜り、遊行を始める。諸国行脚を終えて帰郷した後は托鉢に徹した。著者は、寺院で経済的に保障された生活をする僧の在り方を批判し、粗末な草庵で暮らし、乞食行脚する「真の僧侶」であり続けようとした姿に良寛の思想基盤を見いだしている。
その人柄を、晩年期を共に過ごした村上藩庄屋役の解良栄重は『良寛禅師奇話』で「温良にして厳正」であったと評した。著者は「他人に対しては温良に、自らに対しては厳正なる人間性・人格を高め、無心な愛の生活を実践」した良寛の生き方に、私たちが現代社会を幸せに生きるために必要な心が表れていると訴える。
定価1650円、考古堂書店(電話025・229・4058)刊。