アメリカで真宗を学ぶ -親鸞聖人の「三願転入」とアメリカ人の真宗理解-…羽田信生著

バークレー毎田仏教センター(米国)の所長を務める著者が、親鸞聖人の教え「三願転入」を詳説し、その考えを基に米国人の真宗理解を講義する。真宗大谷派・大垣真宗学院の2019年上山研修での講義を収録。
著者は、聖人が自身の精神遍歴の展開を述べた三願転入を三段階に分けて解説。比叡山での学びが第一段階(第十九願)で、浄土宗に帰依した第二段階(第二十願)、そして称仏から聞仏に転換した第三段階(第十八願)の浄土真宗に至ったという。この三段階を基にして、世界のあらゆる宗教を三つのタイプ(類型)に分類できると語る。
その上で米国人の宗教理解を西洋思想の二大潮流と三願転入を対比して考察。理性的・合理的なギリシャ思想が第一段階、「神中心」が伝統のユダヤ教・キリスト教思想が第二段階に類似し、前者は上座部、後者はチベット仏教あるいは真言宗・浄土宗に向かうことが多いという。
そして第三段階の真宗についてどのように理解し、いかなる展開があるのか。著者は長期の米国滞在の経験を踏まえて日系社会のありようや米国人の価値観などを交えて講義する。「人知から仏智へ」「特殊性から普遍性へ」と三願転入を通じて仏教を学ぶ意味を伝えた渾身の講義録。
定価2420円、方丈堂出版(電話075・572・7508)刊。