今こそ戒壇を建立する時 -記号論的転回による現前-…鍋嶋真永著

日蓮が末法の人々を救うための教えとして示した三大秘法の一つ「本門の戒壇」の趣旨を解き明かし、その建立こそが宗祖の本意であると主張する一冊。日蓮宗大本山本圀寺(京都市山科区)の参与を務める著者が「本門の戒壇」を巡る過去の宗学論を概観した上で、建立すべき戒壇の具体的な姿を提示する。
「本門の戒壇」は本尊に帰依し題目を唱える受戒の場である。これまで日蓮宗では「本門の戒壇」の解釈について、題目を唱える場であればどこでも「本門の戒壇」になり得るという理壇説と実在の「本門の戒壇」を建立すべきであるという事壇説の対立があった。著者は「本門の戒壇」を「理」と「事」に分類する二元論に疑問を呈し、各派が受け継ぐ伝承を記号論の手法を用いて分析する。
『三大秘法禀承事』で日蓮は「本門の戒壇」の建立には「勅宣並びに御教書」が必要であると説いているが、著者はこれを「ご在世の位相でこそ必要とされた条件」であり現代では不要であると主張。日蓮が生きた時代特有の事情を排除し、宗祖の思想の本質を明らかにする。
第六章「立正安世界を果とする本化菩薩戒壇」では本圀寺が建立を目指す「本門の戒壇」の一部である「本化菩薩戒壇」の完成予想図を複数の図面を用いて解説する。
定価1320円、国書刊行会(電話03・5970・7421)刊。