地形と地理でわかる神社仏閣の謎…古川順弘・青木康著

近年、地形から町の成り立ちを探るテレビ番組が人気を博し、書店などでも同様のテーマの書籍を多く見掛ける。全国各地に古くからある神社仏閣の造営場所も、町同様に地形や地理の影響を全く受けていないとは考えにくい。本書は地形と地理的要因から神社仏閣がなぜ、その地に造営されたかを分かりやすく解説する。
鎮護国家のため、あるいは土地に根差した信仰に依拠して造営された神社仏閣ではあるが、立地を古地図などと重ね合わすと、交通・経済・軍事の要衝であることが多い。我が国の長距離交通は長らく船舶が担っていた影響からか、沿岸部や大河川の河口・川岸などに造営されたケースが多々見られる。要因として、外国使節に対して国威を示したり、船舶交通の要衝を守護する役割を担わされたりしたと推測されるという。
50以上の神社仏閣を掲載し、「神社編」では神話と古代の交易・軍事事情を織り交ぜて伊勢神宮・鹿島神宮・香取神宮・出雲大社などの立地を、「寺院編」では政治権力や土着の信仰の関係性などから延暦寺・金剛峯寺・建長寺・永平寺などの立地を解説する。「聖地・霊場編」では地形を絡めて下北半島の恐山・出羽三山・熊野三山・大峰山など各所の信仰の変遷をひもとく。
定価1210円、宝島社(電話03・3234・4621)刊。