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弥勒信仰 もう一つの浄土信仰…速水侑著

2023年10月18日 09時39分
弥勒信仰 もう一つの浄土信仰

「かつて弥勒の信仰は、阿弥陀信仰とならぶもう一つの浄土信仰として日本人の心を深くとらえ、それはのちに現世の浄土であるミロクの世を求める信仰へと姿をかえながら、民衆の心の奥底に永く生き続けた」。再読に値する良書を刊行する「読みなおす日本史」シリーズの一冊(初版、1971年)。仏教と同時期に日本に伝来した弥勒菩薩への信仰の展開とその多様な様相、文化や社会への影響などが論じられている。

本書は、弥勒の浄土である兜率天に死後に上ること(兜率上生)を願う信仰と、はるかな未来に弥勒がこの地上に下りてくること(弥勒下生)にまつわる信仰、この二つの救いの軸を通して弥勒菩薩に対する人々の信仰の歴史を考察している。

盛んに尊像が造立された飛鳥時代、摂関期の浄土教思想の受容に伴う阿弥陀と弥勒の信仰の併存や混在の様相、末法の世を救うべき到来仏として弥勒の下生を求める信仰、法然・親鸞への対抗としての信仰の易行化の試み、そして阿弥陀信仰が来世信仰として決定的になった中世から近世にかけて、弥勒の下生信仰は未来の救済から現世の救済へと大きく転換し民間信仰化していく。そうした流れが論点や論旨も分かりやすく示されており、半世紀を経てもその価値が色あせない好著。

定価2420円、吉川弘文館(電話03・3813・9151)刊。

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