親鸞の念仏三昧論…武田龍精著

本書は、親鸞聖人主著『教行証文類』を中心に念仏三昧に関する思惟を記し、念仏三昧こそ凡夫にとっての正法(真宗)であることを明らかにする。
序論で著者は、念仏三昧の意義を語る上で、『教行証文類』で引かれる道綽撰「安楽集」の観仏三昧経から、念仏三昧に関する釈尊と父、浄飯王の対話を記す。浄飯王は「念仏三昧よりも第一義空に諦達できるようなもっと深遠な行道を単刀直入に勧めないのであるか」と不満を語り、釈尊は「念仏三昧によって得られる果徳が、真如実相第一義空という仏地の果徳にも、究竟的に匹敵する凡夫行である」と応答。利益は翳身薬に譬えられ「一切三昧のなかの王」と三昧中の最高位の位置付けであると意義を示す。
3章立てで、第1章「念仏三昧は、これ真の無上深妙の門なり」は、法照の言葉などを引き、念仏三昧の教法が絶対普遍の仏法であることを説く。第2章は「教行証文類における念仏三昧に関わる他の重要諸文」で念仏三昧がどのように捉えられているか原文を引用し考察。第3章「源信の念仏三昧論」では『往生要集』における念仏三昧に関わる主要な原文を引用し、各文に依拠して、念仏三昧に関し源信がどのような性格の三昧行と捉えたかを概観する。
定価2750円、永田文昌堂(電話075・371・6651)刊。