住吉公園と住吉さん 住吉大社から生まれて150年…水内俊雄・小出英詞編著

今年は明治政府が「公園」の制度を定めて150年の節目で、全国で多くの寺社の境内地が指定され、大阪府内でも1873年8月2日に住吉大社の境内全域が最初の公園地となった。地理学、郷土史、農学、公園行政、造園、都市研究などの専門家や神職が様々な観点から「日本最初の公園」の歴史を古写真・絵図や復元地図など多くのカラー図版と共にひもといた。
1898年6月に発行された刷り物「住吉御潮湯禊舘之図」が住吉大社に残っている。住吉公園西にあった潮湯館を中心に、園内や住吉大社の社殿を描いている。潮湯とは海水を沸かした風呂のことで、海水による禊祓の信仰と、海水の薬効に基づく湯治法として古くから堺や住吉の辺りで見られた習俗という。絵図には潮湯館の広大な敷地に4階建ての楼閣、2階建ての回廊式母屋、池や庭園に照明灯を設置していた様子が描かれており、信仰・健康・遊楽を兼ね備えた一大レジャー施設だったとうかがわれる。
明治初年までは紀伊街道沿いを中心に料理屋・茶屋・土産物屋がひしめき合っていたが、人力車の利用や阪堺鉄道の開通などで人の動きが大きく変わり、料亭などは衰退していった。代わって行楽地として注目を集めていったと指摘する。
定価4180円、東方出版(電話06・6779・9571)刊。