修行者達の唯識思想…佐久間秀範著

心から全てのものが生み出され、外界には何も存在しない――。
唯識思想をそんな形而上的な観念論と捉えるのではなく、修行者たちの修行体験から生まれた方法論であることをひもといていく。瑜伽行唯識学派の形成、展開をたどり、修行風景の様子を探る。
唯識は「唯だ識のみ」と書き下されるために、形而上的な観念論と理解されやすい。しかし、実際の唯識は「想い描きだしているに過ぎない」という意味であり、私たちが認識している世界は言葉によってつくり出されているということに気付くためにヨーガ行者のグループ「瑜伽行派」がつくり出した方法論であることを著者は示す。
この世界が、自分自身が言葉によって思い描いた世界であることに気付き「あるがままの姿(真如)」を見る。そのことを察知した「修行者の視点」と、気付いていない「一般常識的視点」に分類。『中辺分別論』や『唯識二十論』のほか『解深密経』『摂大乗論』『唯識三十頌』などの文献の内容を「修行者の視点」「一般常識的視点」に注目して読み解いていく。
これまでの唯識思想やその展開に関する誤解を解きながら、分かりやすい言葉で書かれた唯識の思想の一般書。
定価4070円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。