二尊院の二十五菩薩来迎図…小倉山二尊院編著

「嵯峨三名跡」に数えられ、京都嵐山の紅葉の名所として知られる天台宗の古刹小倉山二尊教院華台寺は、同寺所蔵の「二十五菩薩来迎図」(以下「来迎図」)の修繕を京都国立博物館の協力のもと約3年間にわたって行った。その保存修理報告書かつ研究書として、本書は刊行された。
百人一首にも詠われた「小倉山」の麓にある二尊院は、釈迦如来と阿弥陀如来の二尊を本尊とすることで有名。ただしこの「来迎図」は、これまで保存の観点から公開されることはまれで、知る人ぞ知る寺宝となっていた。室町時代に宮廷の絵師として活躍した土佐派の祖・土佐行広の大作で、重要美術品の認定も受けた歴史的な名幅だ。来迎図というと阿弥陀如来を中心に来迎の光景が一幅に描かれているものが圧倒的に多い中、この「来迎図」には阿弥陀如来は登場せず、二十五菩薩に地蔵菩薩と竜樹菩薩を加えた27の菩薩が来迎する様子を17幅に分けて描く非常に珍しい構成を取る。
本書は美術、歴史、科学調査など各分野の専門家による論考を収録する。平安・鎌倉仏画の表現手法を踏襲しつつ、室町時代ならではの表現感覚をも加えたこの名幅の美を、新たに撮り下ろした高精細画像により、余すところなく紹介している。
定価4180円、国書刊行会(電話03・5970・7421)刊。