塗り直さず負担少なく古仏修復 京都佛画研究所

仏画制作・修復を手掛ける京都佛画研究所(京都市伏見区)は古画修復で培った技術を活用し、古仏の修復に取り組んでいる。同研究所オリジナルの洗浄液を使い仏像に負担をかけずに汚れを除去し、かつての輝きを取り戻す。
同研究所代表絵師で絵画研究家の大里宗之氏は「仏像修復に際して使われる洗浄液の中には金箔と化学反応を起こす成分を含んだものがあり、洗浄により仏像を傷めてしまうケースがある」と指摘する。
一方、天然素材を独自調合した同研究所オリジナルの洗浄液は、仏像表面の金箔や絵の具の成分に悪影響を及ぼすことなく、すすやほこり、油脂など固着した汚れを除去。対象によって洗浄液の成分の比率を変えて効果を高めているという。
この洗浄液を使うことで、同研究所は漆の塗り直しや金箔の貼り直しをすることなく仏像を洗浄・修復する。
大里氏は「塗り直しによって細やかな仏像の彫りが漆で埋められてしまう恐れがある。塗り直さない私たちの研究所の修復では、その心配がなく原形を長く保持できる」と長所を説明。希望に応じて補箔・補彩あるいは欠損箇所を復元すると話す。
最近の修復事例として、江戸期に「大仏師」として活躍した渡邊康雲作と伝わる阿弥陀如来像が挙げられる。400年間にわたって固着した汚れを除去して欠損部を補箔。古色仕上げで古仏にふさわしい像容にした。
同研究所では古画修復にも力を入れ、昨年には臨済宗建仁寺派高台寺塔頭圓徳院(同市東山区)の歌仙堂天井画を修復。経年劣化で埋もれた書や絵の痕跡を赤外線カメラで確認し復元した。
問い合わせは同研究所=電話075(571)1412=まで。