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高齢被爆者の相次ぐ死 戦後75年変わりゆく慰霊祭

2020年8月7日 16時46分
8月5日の本願寺派原爆逮夜法要の提灯行列。親子連れの姿が継承がうまくいっていることを感じさせる(2011年) 8月5日の本願寺派原爆逮夜法要の提灯行列。親子連れの姿が継承がうまくいっていることを感じさせる(2011年)

原爆で焦土と化した広島、長崎の両被爆地は、放射能汚染で「75年は草木も生えぬ」と言われた。その予測に反して被爆翌年から残留放射能の数値は下がり、植物は芽生え、緑あふれる街並みは復興した。しかし75年を迎えた今もなお被爆者の傷は癒えず、原爆症に苦しんでいる。先の大戦で激しい地上戦が行われ、民間人を含む多くの人々が犠牲となった沖縄も、基地問題や放置されたままの遺骨、不発弾の問題などは解決していない。被爆・戦後75年は私たちに何を問い掛けているのか。

75年前の原爆投下直後、広島に降り注いだ放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」について7月29日、国が定めた援護区域外で浴びた人も被爆者認定するという広島地裁の判決があった。黒い雨による健康被害や被爆者認定問題は長年論議されてきたが、結論に至らぬまま75年を迎えていた。翌30日には原告団の代表らが「高齢化が進み、もう残された時間はわずかしかない」と、松井一實・広島市長に控訴しないよう求めたという。

この問題について生前「何とか認定してあげてほしい」と願っていたのが、同市西区・三篠神社の野上光章宮司(昨年3月に84歳で死去)だ。

小学6年の時に被爆し防空壕に逃げ込んだが、しばらくすると水が流れ込んできた。火災で外に出られず、腰まで漬かった状態で夕方まで過ごしたが、その水が黒い雨だった。

「小学校の教員時代には原爆のことは一切話しませんでした。思い出したくなかったからです。しかし、時間がたつとともに次世代に伝えなければとの思いを強くしました」と語っていた野上宮司。2007年には黒い雨の影響とみられるぼうこうがんが見つかったが、病気と闘いながらも原爆忌早朝の原爆供養塔での慰霊祭の奉仕や継承に取り組んでいた。

広島県宗教連盟の理事長を長年務めていた同市東区・広島東照宮の久保田訓章名誉宮司も昨年4月に86歳で亡くなった。骨髄異形成症候群だった。疎開していたため直接被爆ではないが、投下の3日後に広島に入り被爆。自身が見た広島の惨状と、被爆翌日の7日の夜を同東照宮で過ごした原爆作家・詩人の原民喜氏のことなどを語り、核兵器廃絶、平和実現を強く願い続けていた。

被爆75年の長崎原爆忌を1週間後に控えた2日、臨済宗妙心寺派第32代管長を務めた福岡県久留米市・梅林寺の東海大光閑栖が94歳で亡くなった。長崎市の造船工場に学徒動員され、作業中に被爆。市内で救護活動に当たり、多くの傷病者や遺体を担架で運んだ経験から、原爆忌には毎年、長崎に足を運んで犠牲者に手を合わせ、日頃から自身が運んだ人々の菩提を弔い続けてきた。昨年の原爆忌にも酷暑の中、高齢の体を押して一人で長崎を訪れていた。

原爆体験者の死は、戦後75年という年数の意味するものが何かを強く感じさせるものとなった。残された時間はもうわずかだ。

戦争体験者、被爆者の高齢化、減少が進む中にあっても途絶えていくものばかりでなく、慰霊祭の継承、世代交代は進み、思いはしっかりと受け継がれている。

広島原爆忌前夜の5日には浄土真宗本願寺派安芸教区の広島市寺院連絡協議会が主催する原爆逮夜法要を営み、原爆ドーム横の西向寺から供養塔まで提灯行列が行われる。近年は目に見えて被爆門徒の姿は減り、代わりに若い親子連れの参加者が目立つ。75年の歳月を感じるとともに、継承がなされていることに安堵させられる。(詳細は2020年8月7日号をご覧ください。中外日報購読申し込み

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