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生きていること

〈コラム〉風鐸2020年3月24日 09時24分

生きる意味を考えずに一生を過ごす人は、おそらくいない。しかし、人はいつの頃からそんなことを考えるようになるのだろうか◆ふるさとの家の裏を流れる小さな川や近くの山で、時間のたつのも忘れて遊んだ子どもの頃に、生きる意味について考えた記憶はない。ただ生き物のように躍動する姿しか思い出せない◆当時は、近所の腕白仲間と稲刈りの済んだ田んぼで草野球に興じ、水に潜って泳ぎ、魚をつかむことに夢中だった。山で木の実を採り、小鳥を捕まえる仕掛けを作った。銀色に光る水の中の静寂。落ち葉を踏んで分け入る山から発散される熱気――それを全身で感じることが生きていることだった◆時間を巻き戻すと、友達や異性を意識し始めてから自分を考え、生の不思議を感じるようになった気がする。そういえば『君たちはどう生きるか』のコペル君はデパートの屋上から地上を見下ろした時、人間存在を客観的に眺め、生きることについて、より深く考えるようになった◆私という存在は、見えざる宇宙の意志によってこの世に生を受けたとしか言いようがない。無限大の宇宙に、たった独りしかいない私は、やはり見えざる者の力によって生まれたほかの生き物たちと共に存在している。これが、この世に生を受けた私について説明できることの全てではないだろうか。あとは、それをどう生きるかである。(形山俊彦)

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