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中外日報宗教文化講座2021
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わたくしという現象

〈コラム〉風鐸2020年12月15日 17時09分

人が自己表現を欲していることに感慨を覚えた経験がある◆暮れなずむ京都を歩けば鴨川辺りは空が南北に開け、遠くに山の起伏が黒ずんで見える。三条大橋のたもとに差し掛かると打楽器を叩くような音が聞こえ、川岸に座った男が両手にバチを持ち上半身を激しく動かしている。周りに半円形に並べてあるのは伏せたポリバケツや大小の丸いステンレスの盆や食器類で、それを両手に持ったバチで激しく、小刻みに、強弱をつけて打っている。時々、足元のつぶれた金ダライを手で引き寄せて地面との摩擦で起きる新しい効果音を挿入する◆巧みなバチさばきに合わせて体を動かす人や、前に置かれた容器にお金を落とし入れる人がいる。周囲の反応はお構いなしに、孤独なドラマーは背中を曲げ首をかしげて、ひたすら叩き続ける。とある瞬間、ダダッと打ち付けた音を最後に男は決然として立ち上がり、全てが終わった◆自己表現への欲求が芸術や文学を生む。人がそうした衝動に駆られるのは生命体としての働きだろう。表現は自己実現にほかならず、それが生きることかと考える。だが生命の欲求に委ねる「わたし」の衝動は全肯定されるものだろうか◆宮沢賢治は生存を明滅する不確かな現象とみた。「わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です」――この言葉を、もう一度味わっておきたい。(形山俊彦)

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