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記憶に残す風化

〈コラム〉風鐸2021年8月10日 10時15分

全てのものは風化する。諸行無常であり、それは物事の真理に違いない。コロナ禍でにわかに注目されたスペイン風邪も風化し、当時の教訓を今に生かすことはできなかった◆今年6月に刊行された『100年前のパンデミック 日本のキリスト教はスペイン風邪とどう向き合ったか』(富坂キリスト教センター編)は過去の資料から、なぜスペイン風邪が忘れられたのか、その原因を分析する◆様々な理由があるが、第1次世界大戦や朝鮮と中国の抗日運動、関東大震災などの大事件が続いたのが理由の一つのようだ。また感染者は畳の上で静かに亡くなっていったのに対し、関東大震災では一瞬にして10万5千人が亡くなり、人々の心に焼き付いた。この震災を記録する碑はあってもスペイン風邪のものは数少ない◆碑を刻むことは風化に抑止の効果がある。宗教界では祖師を偲ぶ遠忌(年忌法要)を営み、遺徳を胸に刻む。数百年、場合によっては千年を超えて行うケースもある。忘れやすい人類が考え出した最良の方法なのかもしれない◆「風化」には元々「徳によって教化すること」という意味があり、仏典に散見される。災害やパンデミック等の苦しみ、悲しみは忘れなくては生きていけない。一方で、事実は記録、記憶にとどめ、後世に伝えていく必要がある。そのためには宗教者による「風化」が必要なのかもしれない。(赤坂史人)

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