怨親平等が米国に
メジャーリーガーの大谷翔平選手が今季の活躍を期して、早々と渡米したことが報じられた。昨年は日本人初の快挙となるMVPに選ばれ、投打にわたる活躍は「二刀流」という流行語を生んだ◆シーズン中、投手として投げた球が相手に当たった際、謝ったシーンがあった。米国では不文律があり、この場合、謝罪はしてはいけないという。日本の習慣が出てしまったのだろうか◆大谷選手は中尊寺などがある世界遺産の平泉に隣接する岩手県奥州市の出身。平泉は源義経が青年期を過ごし、兄・源頼朝に自害させられた場所でもある。義経の身軽なイメージを「翔」とし、平泉から一字取って「翔平」と名付けたと、父親が明かしている◆奥州藤原氏初代の藤原清衡が平泉の地に懸けた思いは、東北で続いた戦乱で亡くなった生きとし生けるものを敵味方なく弔う「怨親平等」を体現する仏国土の建設。地元ではこの点を強調し、世界遺産登録に向けた運動を展開、2011年に実現した。大谷選手は当時、高校生で、この運動などから怨親平等の精神を知ったに違いない◆死球を受けた相手の痛みを思わずにいられない大谷選手がした“謝罪”には、こうした背景があるのではと想像してしまう。既に二刀流の躍動でメジャーリーグの一部のルールを変えてしまったようだが、不文律さえも変更してしまうような活躍を今季も期待したい。(赤坂史人)