自問の日々
ロシアのウクライナ侵攻から間もなく50日になる。ロシア軍による「戦争犯罪」が明らかになり、世界は非難を強めている。停戦交渉の行方、和平の実現はいまだ見通せない◆日本や欧米諸国を中心にロシアへの経済・金融制裁が強化されている。それでもプーチン大統領への国民の支持は揺るぎないようだ。ロシアの独立系機関がこのほど発表した世論調査で、大統領を信任するとの回答は83%に達し、侵攻前より12ポイント上昇したという◆調査結果の信頼性は政府系機関が行うものより高いとされる。対面式の調査のため政権に批判的な回答を自制した可能性もあるが、それでも高い支持率だ。侵攻をウクライナ解放のための「特別軍事作戦」と呼ぶなど政権の情報統制が影響していることは間違いないだろう。実際、時折目にするロシアのテレビ映像からは「東部の町を攻撃するウクライナ軍」や「ロシア軍に助けられたウクライナ人」といった内容ばかりが流れてくる◆ベラルーシのノーベル文学賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏は「これからテレビ放送と冷蔵庫の戦いが始まる」とNHKのテレビ番組で語っていた。テレビが有効なのは冷蔵庫がいっぱいの時だけ。ロシアへの制裁で生活が悪化し、冷蔵庫が空になれば人々は変わるだろうと◆侵攻を止めるために何が有効か。何をなすべきか。人々の自問が続く。(飯川道弘)