脱マスク論
長引くコロナ禍で必需品となった最たる物と言えば、やはりマスクだろう。当初の供給不足もなくなり、今やマスク着用はすっかり習慣化した。一方、ワクチン接種が進んだことや感染者数の推移を踏まえ、最近は「脱マスク」を巡る議論が出始めている◆日本は諸外国と違い、マスク着用が義務付けられていない。いわば、社会的な要請が着用を定着させたと言える。最終的には個々の判断だろうが、コロナ後を見据えた慎重な議論を期待したい◆丁寧な対応が求められるのは、こちらのマスクも同様だろう。米電気自動車大手テスラの最高経営責任者、イーロン・マスク氏である。総額440億㌦でツイッター社を買収し、世界に2億のユーザーがいるとされるソーシャルメディアを手にした◆同氏はこれまで、ツイッターによる投稿内容などの規制に反発し、言論の自由が守られていないと批判してきた。買収によって規制をどうするのか。ネット上のフェイクや暴力、ヘイトと表現の自由をどう両立させるのか。期待と懸念の双方に応える、丁寧なかじ取りが欠かせない◆マスク氏のツイッター買収は、ソーシャルメディアの勢力図やネット空間の言論の在り方を変えるかもしれない。日本のツイッターユーザー数は5千万ともいわれ、影響は少なくない。脱マスクが議論される日が来るのか、今後の動向に注目している。
(三輪万明)