ライドシェア
地方の寺院に取材に行った帰り、タクシーを呼ぼうと電話したら、30分以上かかるとの返事だった。最寄りの駅まで約5㌔。バスもないので1時間近く待った。結局予定の列車に間に合わず、さらに駅で2時間待つことになった◆運転手さんに聞いたところ、ここしばらくフル稼働なのだそうだ。都市部や観光地だけでなく、過疎地域でもタクシー不足は起きている。鉄道やバスの少ない地方で、運転免許を返納した高齢者にとっては大変な不便を強いられる。特に病院に通えなくなると命にも関わる◆政府が「ライドシェア」の検討を本格化させる。一般の人が自家用車を使い有料で客を運ぶライドシェアには、事故の恐れや料金体系など様々な課題があるが、地方の実情を目の当たりにすると早急な対応が必要だと痛感する◆参拝者に高齢者が多い寺社にとっても喫緊の課題だ。交通手段が理由で寺離れが加速するようなことのないよう対策が求められる◆以前大きな法要を取材した時、山務員が足の弱い人を車で駅に送るのを見たことがある。これをライドシェアに拡大できないか。さすがに専従は無理だろうから「手が空いていれば送迎します」くらいのスタンスで。「ついでに病院やスーパーに行くお手伝いもします」とすれば、参拝者の利便性だけでなく地域貢献にもなる。これも一つの利他行と言えないだろうか。(有吉英治)