朝鮮半島の仏教
朝鮮半島の仏教に関する研究や書籍は、インドや中国の仏教と比べると少ない。大学の仏教系学科でも、朝鮮半島の仏教は講義が一つ、二つある程度で、体系的な知識を得る機会はあまりない◆従来、朝鮮半島の仏教は、中国仏教の延長線上にあるとか、「直輸入」であるといった理解が常識だった。研究が進み、道教や風水の影響を強く受けた複合的な信仰を持つことが知られるようになったが、その研究の重要性についてはいまだに軽視されている感が否めない◆朝鮮半島の仏教には「韓国仏教」と「朝鮮仏教」という二つの呼称が存在する。現に仏教が盛んなのは韓国だから「韓国仏教」が適切という人もいれば、朝鮮半島の仏教の歴史には現在の北朝鮮の領域も含まれるわけだから「朝鮮仏教」と呼ぶべきだという意見もある◆しかし、この議論には注意が必要だ。大韓民国憲法では、同国の領土を「韓半島と付属島嶼」と定める。朝鮮半島全体を指すから「朝鮮」という理屈はこちらに悪意がなくとも、相手の心象を悪くする可能性がある。事実、「朝鮮仏教」という呼称を嫌う韓国人研究者も多い◆朝鮮半島の複雑な近現代史を考えるとき、日本による朝鮮統治の過去を無視するわけにはいかない。我々も諸々の混乱と無縁ではないということを自覚した上で、より良い未来に向けて共存共栄していく道を模索していきたいものだ。(奥西極)