高齢者が安心して参加 お寺で無料終活カフェ
東京都墨田区・浄土宗龍興院 大島慎也副住職

東京都墨田区の浄土宗龍興院は昨年から、2~3カ月に1度「おてら終活カフェ」を開いてきた。コロナ禍のため今年はまだ開催できていないが、大島慎也副住職(39)は「地域の医療・介護関係者とも連携しながら、高齢者のためのコミュニティーの場を広げていきたい」と展望を語る。
大島副住職は現役の歯科医師でもある。足腰が悪かったり、病気のために直接歯科医院に行けなかったりする人を対象とした訪問歯科診療が中心で、ポータブルの診療器具を携えて赴く患者のほとんどが高齢者だという。入れ歯を調整している最中など、患者が手持ち無沙汰な時間には世間話にも付き合う。
その中でよく話題となるのは、自らの葬儀や墓のこと、相続の問題、死後のペットの心配など終活に関わることだった。またそういった悩みは身近な人にはなかなか相談できずに抱え込んでいる人が多いことも分かった。
「終活に関するセミナーなどは様々な業種や分野で行われているが、どうしてもビジネスが先行しがち。お寺ならば中立の立場であり、安心して参加してもらえるはず。また、仏様が見守る神聖な空間であるお寺を会場とすることは、自分の生と死、死生観を学びながら考えていく場所としてふさわしいのではないか」と終活カフェの開催を決めた。
同院の終活カフェは参加無料で、行政書士や葬儀関係者、介護関係者ら終活に関わる様々な専門家を講師として招いて本堂で行うセミナー形式と、書院に場所を移して茶を飲みながら講師や大島副住職に気軽に終活の悩みを相談することができるカフェ形式の二部構成となっている。
歯科医師と僧侶という二足のわらじに共通するのは「高齢者のため」という目的意識だ。ゆくゆくは寺を、地域の高齢者を守るための拠点にしていきたいとの思いもある。「地域に『開かれたお寺』を目指して企画しているが、やはりただお寺に来てもらうのはハードルが高い。お茶を飲みにという理由でも気軽にお寺に来てもらうきっかけになる」と話す。これまで同院とは縁のなかった地域の人々もカフェに参加しており、リピーターも多いという。
カフェは新型コロナウイルスの影響で4、7月の開催は中止に。再開の要望も多いが、高齢の参加者が多いため慎重に開催時期を検討し、十分な感染拡大防止対策を取った上で再開したい考えだ。
(佐藤慎太郎)