SDGsでつながる 異業種と共に課題解決
山梨県甲州市・曹洞宗法幢院 松山典嗣住職

自然に恵まれた山梨県甲州市の曹洞宗法幢院は昨年11月に2週間、坐禅会を開いたところ、コロナ禍にもかかわらず約300人の参禅者が訪れた。松山典嗣住職(42)は成功の鍵は、異業種と連携できる「SDGs」への取り組みだと話す。
松山住職が持続可能な開発目標であるSDGsの理念を寺院運営に用いるようになったのは2年半ほど前だ。様々な行事をSDGsの17の目標と結び付けている。
例えば坐禅会は、SDGsの3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」、坐禅会で地元の特産品を販売する取り組みは、11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」に当たるといった具合だ。
もともと「葬儀や供養だけでなく、生きている間にお寺に関わってほしい」と精進料理教室や子ども坐禅会などの行事を手掛けてきたが、転機となったのは38歳の時、SDGsを推進する青年会議所(JC)のメンバーとなったことだった。以来、社会の問題に取り組むNPOの研修などに顔を出すようになり、身近なところに多くの課題があることを知った。
「社会と関わっていくには対話がキーワード。以前はそれがなかった。一方的に教えを伝えようとしていた。今では地域の声が自然にお寺に届くようになった」
寺や様々な場所で地域の課題について話し合う時、既にSDGsへの取り組みが始まっていると感じている。「課題を抱えた当事者も含めて、自分たちで何ができるか。異業種の団体と組むことで解決策が生まれることがある。SDGsは地球規模の大きな課題を扱うが、それを細かくして目の前の課題に落とし込んでいくことができる」と語る。
コロナ禍以前は在宅で仕事をする人たちにスペースを貸す「寺co-working(コワーキング)」の1カ寺としても活動。地域住民と耕作放棄地でソバを育てるなど、地域に密着した取り組みを展開している。
曹洞宗宗務庁もSDGsに取り組んでおり、SDGs推進委員会で具体策を検討している。その委員でもあり、オンラインで自らの経験を伝えている。
「1カ寺でできることは限られている。多くのお寺が取り組み、連携していくことで、もっと面白いことができる。そうしたら日本も元気になっていくだろう」と夢は膨らむ。
(赤坂史人)