寺院初の盆栽庭園開く 生きる禅学んでほしい
京都市北区 臨済宗大徳寺派芳春院 秋吉則州住職
京都市北区の臨済宗大徳寺派芳春院の秋吉則州住職(同派宗務総長)は昨年3月、寺院庭園としては初となる本格的な盆栽庭園を開園した。秋吉住職自身が庭を設計し、樹齢800年の古樹を含む50点余りを配置。愛好家はもちろんのこと、多くの人に石庭に込められた禅の心と、大自然に宿る仏性が凝縮された盆栽に触れ「生きる禅、哲学」を学んでほしいと願っている。
同院は大本山大徳寺の塔頭で、山内北側に位置する。前田利家の正室・まつ(法名・芳春院)が1608年に建立した前田家の菩提寺だ。盆栽庭園は芳春院境内の龍泉庵の南側の雑木林を整地して造園したもので、秋吉住職自らがデザインして周囲を茶室風の建物や回廊、塀で囲み、内側の石庭には水石、苔丘を配置し、参拝者が盆栽をゆっくりと楽しめるようになっている。
盆栽を提供しているのは、秋吉住職と親交のある世界的な盆栽家の森前誠二氏(埼玉県羽生市在住)。有名作家の木村正彦氏の作品や、京都国際文化振興財団「慶雲庵」所蔵の作品などを中心に、古いものでは上杉謙信が遠征の途中で家臣に採取を命じたと伝わる樹齢800年の上杉謙信伝承樹「謙信峠」なども展示している。春先のこの時期はこれから美しい花を咲かせる梅の老樹が登場し、秋には紅葉など季節ごとに盆栽作品の入れ替えを行う。
盆栽に詳しくなくても心配はない。森前氏に代わって芳春院に常駐し、庭園の管理や盆栽の世話を手掛けている渡邉邦彦氏が分かりやすく説明してくれる。
秋吉住職は、石庭と盆栽に共通するのは仏教、禅の精神だと強調する。
「盆栽は遠き昔に大陸から伝わり、今日まで各時代の人々の美意識と共に『自然の中のどこにでもある仏性』が一つの形に凝縮されて創り出された。石庭の水石は、室町の東山文化に端を発した盆石から形を変えながら禅の心と共に継承されてきたもので、一塊の石が見立て心によって見果てぬ世界を楽しませてくれる」
コロナ禍で旅行もままならない中、この庭から世界の自然風景に思いをはせるのも一興だ。「石庭と盆栽が融合したこの庭園にたたずみ、皆さまの心の内に『何か』を感じていただけたら」と秋吉住職は来園を呼び掛けている。
(河合清治)