震災機に藤まつり開始 人が集うご神木を育成
東京都調布市・國領神社 野澤靖明宮司
國領神社(東京都調布市)のご神木「千年乃藤」が4月中旬から咲き始め、満開を迎えた。見頃の時期に合わせて藤まつりが開かれるなど、ご神木の下には地元住民はもちろん遠方からも多くの人が集い、憩いのひとときを過ごしている。
同神社の藤の木は樹齢400~500年とされ、畏敬の念を込めて千年乃藤と呼ばれる。以前はケヤキの木に絡まっていたが、落雷によりケヤキが朽ちてしまった。1972年に高さ4㍍、面積400平方㍍の藤棚を設け、ケヤキの代わりに高さ12㍍の電柱を2本建てた。藤の木は電柱に絡みながら、棚全体に広がる。
昔は藤の下に人が集まる行事もあったが、時代とともに廃れてしまった。野澤靖明宮司が所属していた地元の青年会議所の知人らの提案を受け、藤まつりを始めた。折しも2011年。東日本大震災後、近隣の神社では神輿の渡御などの行事を自粛する中、震災復興のためにやろうと第1回を催した。東北の物産展を開き、売り上げは義援金にした。
5回目以降は震災復興から藤の育成事業に切り替えた。老齢となった藤は昔と比べて垂れる花の長さが短くなった。植栽を始め、現在は10本の藤を育てている。
満開の時期に合わせて例年2日間、藤まつりを開く。屋台が並び、フラダンスやジャズなどのステージが用意され、境内は多くの人でにぎわう。10回目を迎えるはずだった2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大。「できることをやろう」と準備を進めていたが、中止を余儀なくされた。21年も1日目は開催できたが、翌日からは緊急事態宣言が発出され、2日目は断念せざるを得なかった。
それでも、昨年から子ども向けの夏祭りや秋祭りを企画するなど新しい取り組みを続けている。
「もともと楽しいことが好きだった」と笑顔を見せつつ「やらないのは楽だけど、何かをやらないとこの先、残らないという意識もあったのかもしれない」と振り返る。
今年は4月の土曜、日曜の4日間に増やし、新たに子ども向けに子ども縁日や自分で作れる綿菓子も始めた。
「10年も続けてきたと思えない。震災から始めて、地域の仲間に支えられてやってきた。訪れた人が楽しんでいる顔が見られるのがうれしい。特に子どもたちの笑顔が見られるのがうれしい」と語る。
(甲田貴之)