子の育成と文化継承に力 青少年に充実の人生を
埼玉県川口市・日蓮宗実相寺 松永慈弘住職
埼玉県川口市の日蓮宗実相寺は毎月、「実相キッズ」を催し、地域の子どもたちの健全育成と日本文化継承に努めている。
荒川を挟んで東京都に接する川口市。鋳物の町として全国に知られるが、現在は工場跡地に高層マンションが林立し、人口が増え続けている。60万人はさいたま市に次ぐ規模だ。1363(貞治2)年開創の実相寺の周辺も閑静な住宅地となっており、近くに県内で最も高いエルザタワーが立つ。
実相キッズは1998年から始めた。当時は援助交際が社会問題となっており、松永慈弘住職(59)の「世の中がおかしい。人任せにせず、お寺でできることをしよう」との思いからだった。
毎月第2日曜の午後2時、近隣の小中学生が20人ほど本堂に集まってくる。まず「けじめをつける ひとにはやさしく よのためひとのため やればできる」と3回唱和。『法華経』自我偈の読経、唱題をした後、松永住職が「易経」などの古典をやさしく解説する。子どもが自分のこととして受け止められるように、対話しながら人の生き方を共に考える。
「例えば勉強しなさいと言うにしても、ただ『やれ』では伝わらない。勉強すれば視野が広がり、できる仕事も増えると、大人が持っている情報を添えて、納得できるようにすべきだ」
続く日本文化に触れる時間では、1月はたこ揚げ、年末には餅つきと、その時期に合った遊びや伝統行事を体験する。「時には軽いけがをすることもあるが、小さな危ない体験が大きな事故を防ぐことにつながる。もち米を蒸すのにあえてかまどを使うのも、いろんな体験を子どものうちにしてほしいから」。最後は広い境内を生かし、鬼ごっこなどで遊んで終わる。夏休みには1泊2日の「サマーステイ イン 実相寺」も行う。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからも継続しているが、緊急事態宣言に重なった時は中止した。「毎月コンスタントに開催していないと、子どもは来ていいのか分からなくなる」。参加者が10人以下のこともあったが、やめるつもりはない。
「自分を高めて社会に貢献し、それで自らの生を全うしていくという意識を、幼い時から持つことが大事」。子どもたちの瞳が輝き、充実した人生を送れることを願い、生涯続けていく覚悟だ。
(有吉英治)