PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
宗教文化講座
PR
中外日報宗教文化講座

無縁仏慰霊祭 増える孤立死、背景に貧困拡大

南霊園の無縁堂前で営まれた無縁仏慰霊祭(大阪市阿倍野区) 南霊園の無縁堂前で営まれた無縁仏慰霊祭(大阪市阿倍野区)

大阪市阿倍野区にある市設南霊園は、ビル街のすぐそばを走る高速道路の車の音が高架からひっきりなしに降り注ぐ。この広い敷地の西端にある納骨施設「無縁堂」で毎年9月の彼岸の時期に、「市無縁仏慰霊祭」が行われる。むせるような残暑の中、堂前の白いテント内の椅子に市役所幹部や福祉団体関係者が喪服で並び、後方の一般参列者はポロシャツや作業服姿の高齢者が目立つ。御影石の慰霊碑にはワンカップ酒と「450円」とスーパーの値札が付いたままの花束が供えられていた。ここには市内で亡くなり5カ所の斎場で火葬されたものの引き取り手のない遺骨が集めて納められる。貧困で生活保護の独居者が多く、「行旅死亡人」つまり路上などでの行き倒れ者もかなりいる。今年の納骨数は瓜破斎場973人、小林斎場682人、鶴見斎場134人など計2366人で、30年前からの累計では4万2052人にも上る。例年、2斎場が突出しているのは釜ケ崎など困窮者の多い地区に近いからだと市職員が説明した。

市幹部が「ご親族にまみえることなく孤独のうちに亡くなられた方々……心の痛む思いです。……一人一人が先祖を慰霊する心のともしびを永遠にともし続けていかねばなりません」と冥福を祈る言葉を続け、参列者全員が白菊を献花すると式は20分余りで終わった。「無縁仏」「慰霊祭」と銘打ちながらも宗教色はない。その後、斎場名と人数をフェルトペンで書いた白い布袋にまとめて入った遺骨が、堂の後部ドアからコンクリート床に開いたマンホールのような穴に粛々と納められた。「無縁佛之霊」と記した木札以外に故人を特定する物も一切見られない。

毎年顔を見せる70代の女性は十数年前、当時18歳の長男が不仲から家出して行方不明になった。心配して捜したが、長男がカプセルホテルで病死し不明遺体として火葬されたことを遠方の警察で知った時には、遺骨はこの無縁堂に納められて3年がたっていた。「息子が呼んでいるような気がして」と普段から通う。四国出身で日雇いで働いている高齢の男性は「故郷は真言宗なので、こんなお経もない祭礼は寂しい。仲間は皆、死んだらここへ来るんやなあと思っているが口には出さん」と話した。死亡して身元が分かり、離れた家族に連絡がいくのを嫌がる人もいるという。「もう切れているのに遺骨だけ引き取りに来たら、役所に何かと費用を請求されたりするんや」

そのような労働者を支え続ける全日本港湾労組関西地方建設支部委員長の泊寛二さん(71)は、行旅病死者が相次いだ30年ほど前に市に対応を求めて以来、毎回のように参列する。「本当はこのような葬儀にこそ宗教者が関わってほしい」と言い、仲間の生活保護費での葬儀に僧侶を呼んだり組合員たちの墓も設けたりした。「でも葬式だけでなく人が生きているうちに社会の問題に関わるのも宗教者の務めではないですか」と白髪の頭を振る。当初は納骨は年に500人程度だったのが激増した。しかも以前は多くが釜ケ崎での路上死や簡易宿泊所での病死だったが、「この頃はほかの地域の方がぐんと増えアパートの孤立死も多い。背景に貧困拡大があり、無縁社会がそこら中に広がっているのです」。慰霊祭の後片付けが終わると、林立する高層ビルに囲まれた都会のくぼ地のような霊園から人影が消えた。

(北村敏泰)

本堂で開かれるアートの催しを本尊阿弥陀如来が見守る(應典院)

若者が集まる寺 仏の慈悲に包まれた「居場所」に

4月22日更新

大蓮寺の秋田光彦住職には社会的に知られた別の顔がある。若い頃には東京で映画製作やタウン誌編集などの仕事で活躍し、大阪市内の自坊に戻った後の1997年に、長く廃れていた境内…

「生前個人墓 自然」の前で会員の法要が続く(大蓮寺)

墓友になれてうれしい 寺は生きている人々と関わる場

4月20日更新

大蓮寺の「生前個人墓 自然」に申し込み、秋田光彦住職(63)が面談した人は250人を超える。そこは自らの生きざまを語る場であり、死を前提に死生観を形成する入り口だと住職は…

蓮華の会の合同供養会で法要に参列する会員たち(大蓮寺)

コミュニティー型の墓 生前に交流、死後は会員ら供養

4月19日更新

大阪市天王寺区の浄土宗大蓮寺では年に3回、蓮華の会という集いの合同供養会がある。檀家ではなく、秋田光彦住職(63)が2002年に開設した「生前個人墓 自然」に契約している…

PR

被災地8年目の春 復興への地道な歩み

社説4月17日更新

今夏のWCRP大会 日本からの発信に期待する

社説4月12日更新

幸福度の低さ 日本社会の深刻な病理

社説4月10日更新
宗教文化講座
  • 中外日報購読のご案内
  • 時代を生きる 宗教を語る
  • 自費出版のご案内
  • 紙面保存版
  • エンディングへの備え― 新しい仏事 ―
  • 新規購読紹介キャンペーン
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加