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釜ケ崎で慰霊祭 働く人々「使い捨て」のように

釜ケ崎の慰霊祭で本田神父の祈りに参列者が合掌する(大阪市西成区) 釜ケ崎の慰霊祭で本田神父の祈りに参列者が合掌する(大阪市西成区)

日本最大の日雇い労働者らの街、大阪市西成区釜ケ崎一帯で昨年夏から1年間に亡くなった人は判明分だけで113人。簡易宿泊施設での孤立死、寒い冬に路上で衰弱し息絶えた人もいる。高度成長期、全国から集まった独身男性労働者が経済社会の底を支えた釜ケ崎は今、高齢化と失業・貧困にさらされる。市の調べで約2万人の住民の45%が65歳以上、4割近くが生活保護受給者。だが行政は地域再開発として「街の美化」を進め、あいりん総合センターの移転などで労働者の居場所がなくなりつつある。

確かに野宿者は減少した。だが今も路上で座り込み寝そべる人を「怖いもの」でも見るように目をそらす通行人がいる。以前、路上生活していた男性(56)は「まるでわしらがそこにおらんかのように見られる。襲撃もあり、夜にゴザで寝ていたらこっちが怖い」と打ち明ける。働く人々がまるで「使い捨て」のように排除されつつある。その釜ケ崎地区中心部の三角公園で、今年も8月15日の夕刻に仲間たちによる慰霊祭が行われた。

折からの「夏祭り」で焼きそばやイカ焼き、酒の露店が並び、相撲大会などの娯楽も行われる会場の一角に建設足場用材で組んだ祭壇には、故人の氏名の張り紙が掲げられ、コップの線香立てや花、円空彫りの仏像、カップ酒が並ぶ。数少ない遺影は古びたモノクロ写真や今にも消えそうな粗末なプリントが目立つが、仲間が心を込めて捜してきたことが分かる。日が落ちる頃、紫色のストーラを肩に掛けたカトリック教会フランシスコ会の本田哲郎神父(75)が「仲間の魂のために祈りましょう」と呼び掛けて慰霊祭が始まった。

この地で長年、「おっちゃん」と呼ばれる労働者たちを支援し続ける神父は自らも日焼けし、坊主頭に半ズボン、サンダルといういでたち。奉仕活動で定期的に散髪をしているおっちゃんたちから親しげに声が掛かる。常々「神は最も小さくされた人々の側におられる」と教えの本質を説き、「社会問題から目をそらして天国で救われると説くのは欺瞞です」との言葉通り、釜ケ崎の人々と共に生活を守る活動に取り組む。

集まった人々が見守る中、本田神父は「吉田○○さん」「河野○○さん」と死者全員の名前を読み上げる。多くが60代以上だが、43歳、32歳と若く亡くなった人もいた。姓名が分からなくても「川やん」「フユキさん」と、いつも皆と世間話を交わすのと同じ優しい声で故人に語り掛けるようだ。「貧しさと差別、痛みを知る仲間たちこそ世に平和をもたらす。仲間たちを立ち上がらせてくださるあなたこそ本当の仏様、神様」との祈りの言葉が宗教者として社会に向き合う姿勢を物語る。続けて神父は「誰にも看取られずドヤで亡くなった仲間たちを神様仏様、あなたの懐に導き入れてください」と呼び掛けた。「仏様」は出てきても「アーメン」は出てこない。

公園にいた多くの人が、頭を垂れ手を合わせて黙祷した。締めくくりに「ふるさと」の合唱が始まると、遠くを見るような目で天を仰ぐ姿も見られる。祭壇の遺影にじっと合掌するひげ面の男性(68)は「この中の28人が知り合いや。熱中症や飢え死になんてつろうて……」と唇をかむ。自身もがんに侵されており「もう仕事もできんし長うないなあ」と。追悼の輪の中には袈裟を着けた僧侶の姿もあった。

(北村敏泰)

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