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見送り、見送られ 悼み弔う儀礼に尊厳の意味実感

釜ケ崎慰霊祭の祭壇に仲間たちの祈りが続いた(大阪市西成区) 釜ケ崎慰霊祭の祭壇に仲間たちの祈りが続いた(大阪市西成区)

釜ケ崎の慰霊祭で本田哲郎神父が祈りの言葉を唱える間、祭壇前でずっと阿弥陀経を唱和し続けた真宗僧侶の中原登世子さん(57)は「入り口の宗教が違うだけで人の死を悼むのは同じです」と話した。長髪を小さく結い、黒衣に袈裟の姿は鎮魂の輪に溶け込んでいる。釜ケ崎には少し前から関わり始めた。普段着で歩いていると、おっちゃんから「お姉ちゃん、どこ行くの? 気ぃ付けてな」といつも声を掛けられる。袈裟を着けていれば合掌して礼をする人にもしばしば出会い、身が引き締まる。この地ではキリスト教だけでなく、以前から仏教や新宗教など様々な宗教者らが寄る辺ない労働者たちの支援を続けてきた。炊き出しなど生活支援に始まり、十数年前から葬送や供養の活動を続けてきた僧侶もいる。

慰霊祭で合掌する岡山出身という男性(66)は、中卒で自衛隊に入り北海道で勤務したという。自活しようと大型車運転免許取得を目指したが失敗し、仕事は見つからなかった。職を転々とし、21歳で流れるように釜ケ崎に来た。祖父に「怖いからあそこだけは行くな」と言われていたが、「ここで友達もいっぱいできた。俺も死んだら皆と同じように無縁墓に入るんやろけど、仲間がいるのはうれしい」と語る。男性のように事情があって釜ケ崎で生き、身寄りはなくても仲間ができた人たちが、互いに死んだ後は見送り、弔いをしようという集まりがある。高齢者が多く、毎月1回の会合で近況を話し合う。

中原さんは今春、地元で行われた彼岸会に参加した時、そんな会に参加しているという人が「見送り、見送られることの意味が分かった。死ぬ前に気付いて良かった。間に合った」と話す言葉が胸に響いた。「見送ってくれる血縁者がいなくても、この地にたどり着き同じような境遇にある人同士が縁でつながり、緩やかな関係を結んでいることに温かさを感じました」。そこに「仏性」を見たという。「人は人として生まれ存在しているだけで貴い。貧しくても病身であっても。人間存在の核心に仏性が備わっているから、人は自分を尊ぶのと同じく他者を尊び愛することができる」。葬儀の簡略化が進む時勢に、悼み弔うという儀礼に大切な意味が見いだされていると実感した。集まる人に高齢単身男性が多いので「私は“釜ケ崎の妹”になりたい」と思った。

両親ともクリスチャンで、父親の看取りに牧師が臨席する経験をした。その後も近親者の喪失体験が重なり、大切な人の死に接するともう自力ではどうにもならないことを受け入れる意味が分かった。「我にまかせよ、必ず救う」という阿弥陀仏の喚び声に「『はい』と応えて得度しました」。この地で「誰にも看取られず一人死んでいく」という言葉を聞き、自分のことだと思った。25歳で結婚したが様々な事情により30歳で生き別れ、その後は一人暮らし。だが親鸞は「臨終の善悪をば申さず」と死に方に善しあしはないことを示した。死が視野に入った時、同じように死に視線を向けている他者と縁をつなぎ見送り合う関係を結ぶのは、阿弥陀如来の本願力が人に内在する仏性に働き人間愛として表れていると見える。「貧困の中で一人死んでいく不安は、他者を見送りその名を呼んで思い出を語ることで、自分も同様に尊厳あるいのちとして見送られるだろうという安心に変わる。それを伝えるのも僧侶の役割です」

(北村敏泰)

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