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家族代わりの「抱樸」⑤ 頑張ったら人間は変われる

抱樸館の近所には反対運動の名残ののぼりが 抱樸館の近所には反対運動の名残ののぼりが

抱樸の仲間でつくる「生笑一座」というグループがある。元野宿者らがそのホームレス体験を語るプロジェクトだ。メンバーの西原宣幸さん(69)の右手首にはカッターナイフの自傷痕が4本ある。野宿歴11年の“筋金入り”だが、死ぬか生きるかという経験を重ねた。座名の由来は東日本大震災で、奥田知志牧師が支援活動をしていた宮城県の漁村に、遠方から届いた救援物資に添えられていた「生きていれば笑える時が来る」という励ましの絵手紙。被災者たちの心の支えになった。座長の奥田牧師は「元野宿者だからこそ苦悩をリアルに伝え、生き抜くことの大切さを人々に訴えることができる」と言う。

北九州出身の西原さんは企業で働き妻子もいたが離婚し、同居の母親が他界すると「生きがいやブレーキをかけてくれる人がなくなって」ギャンブルに有り金をつぎ込む生活に陥った。家賃も払えず兄弟に借金しても返さないので縁を切られ、49歳で家も職もなくなる。生活保護も却下された。公園のベンチで寝、ごみ箱の残飯やコンビニで廃棄される期限切れの食品を食べ、公衆トイレの水を飲んで飢えをしのいだ。「心のどこかで兄弟が見つけてくれんかなと望んでいました」。捨てられた空き缶を集めて売り、週に800円ほど稼いだこともあったが、数年すると「テロ対策」でごみ箱が撤去されて缶集めもできず、週のうち2日しか食べ物を口にできない日々が続いた。

飢えと寒さが体をむしばむが、きついのは底なしの孤独。子どもに石を投げられたり、野宿仲間が襲撃されたりする話に怖くなり、人家から離れた洞海湾岸の草むらに移る。たまたま公園で小さな子どもが笑って近づくと、母親が「怖いから行っちゃいかん」と叫んだ。海の水で体を洗ってはいたが髪もひげもぼうぼう。「見てくれだけで、人間とは思われていない」と孤立感が胸に刺さった。拾ったラジオをつけると聞こえるアナウンサーの声だけが相手で、何日も誰ともしゃべらない。衰弱してブルーシートに寝ながら、「このまま死んでたら楽かな。誰にも連絡は行かんやろなあ」。そう思うと込み上げるものを止められなかった。

「助けてください」。そんな時、握り飯を配りに来た抱樸スタッフに初めて声を掛けることができた。それを機に自立支援住宅に入り、半年して仕事に就けた。一座に入ったのは抱樸館に反対運動があると聞き「僕らも同じ人間やと話そうと思った」から。初公演では2千人を前に足が震えた。だが「自分は“立ち直れた良い人”じゃなくて、とんでもない人生を送った。でも周囲の人の助けがあり、ちょっと頑張ったら人間は変われるんです」とようやく話すと、奥田牧師が「それや!」と応えた。「自分も人のためになるなら」と仲間7人で続ける公演は全国の学校やPTA、福祉団体などもう90回、延べ2万人以上に上る。

体験談に加え段ボールハウスの作り方などサバイバル術も面白く語るが、鍵は「困ったら助けてと言おう」だ。「一人じゃなく誰彼なく助けを求めましょう」。そんな訴えに子どもらは熱心に聞き入り、「いじめでつらいけど人に相談します」と反応がある。「何度も死のうと思ったけど、もう一度頑張って見ようと思います」。そう感想文を寄せた定時制高の女生徒がその後どうしているか、西原さんは気掛かりだ。「それが人と人とのつながりですよね」

(北村敏泰)

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