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家族代わりの「抱樸」⑥ 「助けて」言えた時、助かった時

地域の様々な人たちの拠り所になっている東八幡キリスト教会 地域の様々な人たちの拠り所になっている東八幡キリスト教会

抱樸の奥田知志牧師が要支援者を決して見放さず、その場から「逃げない」姿勢はキリスト者としての信念に裏付けられている。だがそれは決して「強い」からではなく、そこにあるのは「弱さ」だという。活動でどれほど頑張っても手が届かない問題に突き当たることも多く、自らの無力さを嘆く。でもボランティア仲間も誰も逃げないのは「“出会った責任”というかっこ良いものより、しんどくても逃げられないから」。「神は実に豊かに、この逃げることもできない弱さを私たちに与えてくださった」と言い、無縁社会で逃げ遅れたともいえる野宿者や要支援者と「逃げ遅れた者同士の出会い、連帯です」と話す。「最も小さき者にしたことは私にしたことである」と聖書「マタイ書」のイエスの言葉から「世界を変えようと思えば最も小さな者に関わり続けるのです」とも。

宗教者であるとは、神仏に頼らねば生きていけない人間であると告白すること。自らの罪や弱さと向き合うことを主体の基礎とし、「『俺が悪い』からしか始まらない」と語る姿勢は、水俣病事件で公害と差別を生み出した企業・社会全体を自らの問題と根底的に捉えて「チッソは私だ」と述べた患者と通底する。今の道を選んだのは、キリスト教系大学在学中に大阪の釜ケ崎に支援活動に赴き、経済大国で労働者が使い捨てにされる実態を目の当たりにしたのがきっかけ。「なぜ路上でこんなに人が亡くなるのか。この現実で神がいなければ救い難い。天地を創った神は責任を持っていてもらわんと困る」と考えた。

イエスは十字架で「神はどこにいるのか」と嘆いた。「でもそれを神たる彼が吐いた限り、何も語らなくても神はそこ、十字架にいる。その神を見いだすために牧師になったのです」。信徒だからではなく、全ての人が既に救われている。「でないと釜ケ崎のおっちゃんは皆、落ちる」と、教えへの態度が研ぎ澄まされた。「イエスが言うからやろう」が行動指針。「罪を背負って十字架に掛けられたイエスが、自分の代わりに今日も殺されている」と考え、「だが安価な罪の赦しはなく、罪人として赦されて生きるしかない。そして十字架の意味する教えは、他者のために愛すること」と説く。「愛されているのだから愛する」というこの「応答的倫理」は実践で示され、抱樸館には「ごちそうさまBOX」がある。野宿から救われて自立した人が今度は誰かを救うために余裕のあるときに食券をカンパし、これで緊急的に避難してきた人が食堂で食事をする。

牧師は、弱者同士の連帯を「『自己責任』を押し付けられ弱音さえ上げられない社会で、『助けて』と言えた時が助かった時なのです」と重ねて強調する。原点の一つが自身の体験。長男が中学でいじめに遭い不登校になった。引きこもりで心身が衰弱し、父も体を壊して入院。死を意識する極限状態で、沖縄・八重山諸島の孤島にある学校を知り転校した。父子はそこで受け入れてくれる島人に涙で「助けてください」と手をついた。親身になった世話で長男は立ち直り、「世の中には助けてくれる人がいる」と実感した。様々な支援を繰り広げながらも“スーパーマン”では決してない奥田牧師は言う。「最初の敗者たるイエスは弱者だからこそ救い主になった。平然と助けてと言える、それが宗教者、それが人間です」

(北村敏泰)

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