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羽曳野希望館① 困窮者支援、全ての人が主人公

夫婦はいつも結ちゃんの明るさに支えられる 夫婦はいつも結ちゃんの明るさに支えられる

「子供をおろしたいんです」。H子さん=当時(20)=の切羽詰まった電話の声に市役所の福祉担当職員は驚いた。「待って! お話ししましょう」。結婚相手のS男さん=同(26)=が破産状態の末にうつ病を患い、死を考えるほど追い詰められた二人。市の要請を受けた金光教羽曳野教会(大阪府羽曳野市)の渡辺順一教会長(62)が運営する「羽曳野希望館」シェルターに保護し、何とか助かった。3年半後の今、安定して暮らす夫婦は「当時の事は怖くて思い出せない」と言う。

派遣勤務だったS男さんは、H子さんの実家で同居するギャンブル依存の両親に給料を散々使い込まれた上に、それぞれの親の入院費用の負担で借金がかさんで貧困に陥り、心を病んで仕事もできなくなった。H子さんは胎児が動く8カ月のお腹を抱えて「3人とも絶対不幸になる」と絶望し、中絶して自分も死のうと、両親が留守の隙を見て電話したのだった。

シェルターは生活困窮者自立支援法に基づき府と契約を結んだ希望館が登録した市の窓口からの要請で要支援者を受け入れ、最大3カ月間、住まいを提供する。就労自立を目指すが生活保護につなぐこともあり、渡辺教会長は2016年に近隣のハイツに2DKの2室を借りて始めた。家賃と食費として1人1日6千円が公費支給されるが、衣服や生活用品など不足分は館の持ち出しだ。夫婦を「受けてもらえますか」との市の連絡で教会長が布団や冷蔵庫をそろえた部屋に入ったH子さんは「家から逃げてきて良かった」と安堵した。

渡辺教会長らの世話でH子さんは産科にかかり、S男さんも治療を始める。3週間後、無事に生まれた男の赤ん坊の顔を見てH子さんは号泣した。「お腹の中で一緒に頑張ってくれてたんや。この子も私も0歳から成長できるんやと思うと、いとおしくて」。夫も将来の不安を抱えながらも大喜びだった。希望館と市職員との連携で、フードバンクの食品提供や通院交通費援助、生活器具の支給など支援の仕組みが動き、一家は3カ月後アパートに転居して生活を立て直した。

希望館には無縁社会で行き所をなくした人が来る。あの電話がきっかけでどん底から何とか救出された夫婦。現在、障がい者施設の支援員として働くS男さんは「もっと早く逃げ出せる道を知りたかった」と振り返る。親に構われずに育ち、厳格な祖父は「責任は自分で取れ」が口癖だった。「世の中に助けてくれる場があるなんて考えなかった」。「弱音を吐いたら悪口を言われる」と10代に薬やリストカットに走ったH子さんも「人に助けてと言ってはいけないと信じ、頼り方も知らなかった」と話す。二人で「世間は頑張りようだと思いますが、頑張るにもお金が要る。情報はいっぱいあるのに何が大事か分からない」と口をそろえ、そんな社会で暮らしは決して楽ではない。

野宿の若者や家族の暴力から逃げてきた男性ら希望館で支援してきた困窮者はそれぞれ複雑な事情を抱える。職住だけでなく、季節に合う服や就職面接に行く女性のための化粧品などきめ細かな世話も必要だ。渡辺教会長は「全ての人が神の子として主人公」との思いで寄り添う。夫婦が布団を並べ「川の字」になって眠る男児は3歳のやんちゃ盛りで、遊びに来た教会ではしゃぐ。愛称は「結ちゃん」。「人の結び付きって大事ですよね」。H子さんが顔をほころばせた。

(北村敏泰)

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