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羽曳野希望館② 「連鎖」抜け出すのが宗教の役割

渡辺教会長はアパートの一室のシェルターをいつでも使えるようにしている 渡辺教会長はアパートの一室のシェルターをいつでも使えるようにしている

渡辺順一・金光教羽曳野教会長が「羽曳野希望館」を設立して、この3年間にシェルターで保護したのは40人余り。病気で失職した若者、姑との関係悪化で離婚して車中生活していた女性、DVや親・家族の抑圧で逃れて放浪する人は年齢層を問わない。刑余者や家で暮らせなくなった障がい者もいる。

すさまじい例もある。生活能力がなく浪費癖のひどい20代男性と内縁の女性とその3歳の長女を保護したものの、男性は支援金や斡旋された仕事の給料をパチンコで使い果たすためけんかの末に別居。手続きを手伝って母娘で生活保護を受けるが、1年後に男性が舞い戻り保護を打ち切ったため再び生活苦に。教会長が訪ねるとアパートの部屋は電気もガスも止まってめちゃめちゃの上、妊娠しているので生保を取り直した。しかし何とか出産しても男性はギャンブルばかりで家は荒廃し、揚げ句に行方をくらませたため女性は遠方の父親に連れ戻された。

この間、「知り合った以上、放っておけない」とずっと支え続けてきた渡辺教会長は、荒れ放題で残された借家の壊れた玄関や建具などを自費で弁償した。だが元々女性は父親に売春を強要され、その暴力から逃げてきた経緯があるので心配で仕方ない。「二人とも社会の底辺をさまよい、生活の仕方を知らないのです」。悲しいが、山のような請求書と借金を置いていっても腹は立たず、「周囲に迷惑を掛け続けながら、それでも生き抜いているサバイバル力に、そんな生き方もあるのかとむしろ納得してしまいます」と語る。

うまく運ぶのは喜びだ。夫から3年間も暴力を受けて狭い部屋に閉じ込められ、逃げ出してきた50代女性は、シェルターのアパートのトイレットペーパーを見て泣きだした。それも自由に使えないひどい監禁状態だったのだ。閉じこもりがちだったが、しばらくするとガスレンジをぴかぴかに磨き上げ自炊もするようになった。職を得て自立する時、「お世話になりました。私の誇りのために許せない夫と離婚します」ときっぱり告げる表情に、教会長は「自分の心を取り戻せて良かった」と感じた。

様々なケースはしかし、当人ばかりに落ち度があるのではない。野宿に慣れた人よりも、解雇などで普通の生活が突然破綻する場合が悲惨だ。「家庭や家族が極めてやっかいな暴力・搾取の元凶であることも多いのです」。これまでの例では、要支援者のほとんどが低学歴で職歴も派遣や住み込み店員など不安定な状態が大部分。また精神・知的障がいやその傾向のまま年齢を重ねた人も目立ち、貧困層で障がいが発見されないような家庭環境に置かれていたのではと教会長はみる。

行政制度のはざまになってどの支援策も受けられず、たらい回しされる。DV被害の窓口は人権担当なので生活支援につながりにくい。生活保護を出さず住み込み就労に向けたがる行政もある。そんな状況で「基本的にあまりうまくいかないと感じざるを得ません。どこまで支援したらOKかも難しい」。そう考えるのは、「困窮者がはじき出されてきた矛盾だらけ、穴だらけの社会に戻すだけなら解決にならない」からだ。貧しく中卒で20代の母親に虐待された子がまた同じ生き方をする。「そこから抜け出せない連鎖、つまりは新しい階級社会です」。その価値観を根本的に変えるのも宗教の役割だと信じている。

(北村敏泰)

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