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羽曳野希望館③ 誰をも受け入れ支え合う街に

大祭でも渡辺教会長は平易な言葉で参列者に語り掛ける 大祭でも渡辺教会長は平易な言葉で参列者に語り掛ける

渡辺順一・金光教羽曳野教会長は「教会の広前もシェルターもどこも取次の場」と言う。取次とは神の前である広前で参拝者の願いを神に、神の願いをその人に伝える金光教の作法。羽曳野希望館で困窮者を支え続ける取り組みも信仰に裏打ちされているということだが、これまでの活動の中では葛藤もあったという。教会を継ぐため20年間いた岡山の教団本部から2000年に帰った際、「神人あいよかけよ」、つまり、困っている人を救い人も神も助かるという教祖の教えを実践しようと大阪・釜ケ崎に入った。

都市問題であるホームレス支援に宗教者としてどう関わるかという意識で、本部で教学研究に携わっていた時からの姿勢の延長、「すべての人が神の子として等しくいのちの力を持っている」との教義を自らの身に引き付けるということだった。だが仏教など他宗教の仲間と6年間、炊き出しや夜回りを続ける中で、釜ケ崎の労働者たちの老いや死、孤独という深刻な課題に直面。その人たちの葬送など地方から出た故郷喪失者の心の問題は、地域社会から人々が排出されるという、「都市というより全国の地域が包摂力を失ったという問題。地元でそこに立脚すべき宗教の問題だ」と思い当たる。

「教会は何のためにそこにあるのか」と考えた時に、リストラや離婚、病気など地元の人たちの苦悩が身近に感じられ、地域に足を下ろした密着型の取り組みに転換した。釜ケ崎での人脈を生かして宗教者や労組、福祉団体と協働した希望館を大阪市で立ち上げ、それが羽曳野にもつながった。「宗教は人は皆平等という理念を掲げながら、地域では異質な逸脱者を排除する側にも回りやすい」。そう懸念する渡辺教会長は、信徒もそうでないシェルター入居者も、「誰をも受け入れる、支え合いの街づくり」を目指す。

昨年11月の例大祭。大勢の信徒を前に教会長は「人の世の苦難に次々出会い」という教祖の言葉を伝え、家族を思ってずっと大病を隠していた女性信徒の話をした。そして困難と苦悩続きだった自らの半生を紹介し、「誰もつらい、苦しいことがあります。修行もせず力もありませんが、その悲しみの涙をこの広前で流し神様に引き取ってもらいました」と打ち明けた。信心とは「神の恵みのいのちを味わい、体験すること」と諭し、「皆が神から与えられた聖なるものを心に宿している。真面目に生きるとか、勉強や修行をしたかどうかではなく、神が願うから生きる力が湧いてくる」と付け加えた。

参列者は大きくうなずき、祭壇の横に並んだ若い女性15人が羽曳野教会の聖歌を斉唱する。「今、混沌の人の世に 人の幸をば祈らなむ」。オルガンの音に合わせ透き通った声を響かせる合唱団にシェルターで救われたH子さん(23)の顔もある。「ここへ来るまで金光教を知りませんでしたが、困ったときに神を信じることが自分の支えになると感じました」

渡辺教会長は「教義をそのまま話すのではなく、いかに個別の人の生き方に結び付けるかです」と言い、信徒にも日常的な話し方で接する。取次は“御利益”ではなく、その人に自分の生の輝きに気付いてもらうこと。教会の仕事も希望館の取り組みも「救うというつもりではなく、共振するのです」と話す。「自分が選んで支援するのではなく、神様が連れて来た人と普通に出会うのです」

(北村敏泰)

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