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団地カフェ① つながり大事に宗教者が出向く

団地カフェで手作りした数珠に井川さんと参加者が手を重ね、祈る(東京都港区) 団地カフェで手作りした数珠に井川さんと参加者が手を重ね、祈る(東京都港区)

昨年12月下旬、東京都港区の都営団地芝五丁目アパートの3階集会室で「東京カフェ・デ・モンク」が開かれた。集まった20人ほどの住民にマスターの高野山真言宗僧侶、井川裕覚さん(33)が鏡餅やお節料理など正月の習わしと高野山で新年に営まれる修正会の話をすると、高齢の女性参加者たちから「ためになったわ」と拍手が湧き、続いて全員でお茶を飲みながらの交流会になった。1975年に入居が始まった同団地は住民の平均年齢が70歳超、半数以上が一人暮らしだ。都心ですぐ近くには超高層オフィスビルや繁華街があり人通りが絶えないが、14階建て2棟の間の公園にも棟内の薄暗く天井の低い廊下にも人影はない。「救急車のサイレンが聞こえない日はない」という環境での「団地カフェ」は孤立死防止につながっている。

井川さんらが近くの寺で行う傾聴カフェに3年前、団地で自発的に交流サロンを開いている鴇田すみ子さん(80)らが訪れたのがきっかけで、仲間の僧侶や神職、カトリックのシスターら宗教者が集会所へ足を運び、数カ月ごとに開催するようになった。奈良の寺の次男として育った井川さんは20代の頃、檀家だけでなくいかに広く社会に向き合うかに悩み、「いのちに寄り添いたい」と様々な学びを深めた。そこに起きた東日本大震災を契機に臨床宗教師の養成講座を受けて上京、超宗派でカフェ活動を始めていた。

「独居高齢者問題が深刻な大都会で、こちらから出向くのが大事と思っていたので、お声掛けを頂けて幸いです」という井川さんは以前、関西で孤立死があったアパートで供養を依頼された。一歩部屋に入ると、そこで生活した人が人知れず亡くなったことの重みが、読経する背中にずしりとのし掛かった。地方からの流入と核家族化から無縁が広がる世の中。「福祉貧困など社会構造の問題でもありますが、地域コミュニティー再建は宗教の役割でもある。家族代わりのオープンなつながりを広げたい」と話す。

団地1階ホールからつえを突いた老女が古いエレベーターに乗り込んだ。カフェの日は坊さんの似顔絵が入ったポスターが掲示される。盆が近い夏の会。午後1時に始まると、黒法衣姿の井川さんの軽妙な話に集会室の外まで笑い声が響いた。「盆踊りはお釈迦様が餓鬼道から救われた母と踊ったのが始まりです」。輪廻や先祖供養、幽霊の話も出、参加者は「ふーん」「怖いわ」と相づちを打つ。「ご先祖はどこから帰ってくるのでしょう?」とのマスターの問いに「行ったことないから分からないわ」「あの世っていいとこらしいよ。だって誰も戻ってこないから」と突っ込みが入ると大盛り上がり。「葬儀も、亡くなった人をどう送るかよりどう生かすか。大事なのはつながりですね」。井川さんが、末期がんの老人が孫の心に残る自らの姿を意識して病床でいつもおしゃれをしていたエピソードを紹介すると、鴇田さんもしんみりした。

茶話会では「歌舞伎に行ってきたよ」「体中悪いわ」と数人ずつの話の輪ができる。僧侶らはあちこち回りながら「そうなんですか」と応答し、ビーズ玉に糸を通しての数珠作りも手伝う。完成し互いの手を重ねて「魂入れ」をする際には皆の心が一つになる。「自室では一人でテレビを見て文句ばかり言っている」と苦笑する白髪の女性(80)は「もう先は長くないし不安はあるけど、友達ができて良かった」とうなずいた。

(北村敏泰)

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