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団地カフェ② つらい思いを聴き「共感・共苦」

カフェでは様々な宗教者らが話をする(東京都港区) カフェでは様々な宗教者らが話をする(東京都港区)

都営芝五丁目団地の鴇田すみ子さんは、近隣の団地で孤立死の話をたびたび聞く。「うちはまだ下町付き合いが残ってて良かった」「しょうゆないから貸して」「おにぎり食べない?」といった近所の関係があり、互いに声を掛けて助け合ったり交流会を開いたりしてきた。だがここでも全く身寄りのない人もおり、高齢男性は独居になると生活できずに退去して老人ホームや子供の世帯に行くので老女が多い。わずかに残る男性はカフェに出てこず、ある知り合いの玄関ベルを鳴らしても応答がないので入ると、浴槽に顔まで沈んでいたこともあった。

カフェマスターの井川裕覚さんも出てこない人を気に掛け、「スマホやネットで便利になっても、顔と顔を合わせ心を開いてもらって話すことが大事」と取り組みを地道に続ける。「来て良かった」という参加者の笑顔が最高の喜び。講話内容もさりげない世間話から、「人が亡くなっても人々のつながりで遺族は癒やされていく」といった死生観の話題も多い。老人たちは思い出話で童心に帰ったように生き生きする。だが、戦時中の体験、肉親の死別もある。

夫を亡くした70代女性が「ちょっと来て」と集会室の隅に招いた。「病気で苦しんだのがつらかった」。友人には涙を見せられず、これまで伏せてきたという。死は避けられないと理解しても「どうしても納得ができない」という訴えは質問もなく解決もない。井川さんはただただ聴く。「分からないなりに少しでも共感したい」とこんなとき、よく手を握る。いつもは気丈な人が目に深い悲しみを宿しているのに接して「時間が止まった気がします」。「そうですね」と首を振る以外に掛ける言葉も見つからない。

「共感・共苦」で、井川さんは真言密教の教え「入我我入」を思い起こす。修行して如来の「身口意」の三密と我の三業とが互に入って一体となることだ。そのように「苦しむ人と真剣に接すると、一体になった喜びよりもつらい思いを共有する苦しみが大きい」と正直に告白し、「苦しみをため込む無力さを自覚します」と語る。だが、そんな自分ではどうしようもない「しんどさ」に仲間が、そして仏が「大丈夫」と言ってくれていると思う。マンションの自宅や奈良の自坊に帰ると本尊の前で瞑想する。

一緒にカフェを運営するカトリック修道女会のシスター(44)は、残していく子のために数珠を作る高齢者らと接して「お別れの話が多く、自分一人で老いていく寂しさが伝わってきます」と言う。その誰にも埋められない寂しさを体験したことのない自分が相づちを打つのは簡単だが、「肩をさすって差し上げるしかなく、つながりの大事さを実感します」。そこで神が全ての人の傍らにいて無条件で愛してくれると感じる。「同行二人も同じ。何もできないが傍らにいることができます」

井川さんが自坊にいた20代に檀家回りをした際、在宅介護を受ける末期状態の90代の老女に、「迷惑になるのでは」と面会を避けていた。最期の日、たまたま月参りに赴いた祖父は迷わずその病床で手を握って語り合い、老女は安らかに旅立った。「よくしてくださったおばあちゃんだったのに、僕は本当は怖かったのかも」という井川さんは、祖父から学んだ一番大切な教えだったと振り返る。「カフェも人々の一期一会の場の力。私たち僧侶の目の前の人たちの世間に道場が広がっています」

(北村敏泰)

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