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ビハーラ21㊤ 愚痴聞き役、入所者らを毎日訪問

一人暮らしの高齢者宅で話を聞く三浦さん㊧(大阪市内) 一人暮らしの高齢者宅で話を聞く三浦さん㊧(大阪市内)

「私の仕事は愚痴聞きです」。仏教的福祉団体「ビハーラ21」事務局長の真宗大谷派僧侶・三浦紀夫さん(53)は言う。この団体は超宗派の宗教者が2004年に社会福祉活動のために立ち上げ、現在は大阪市内に各種介護施設、デイサービス、ケアホームなど8カ所の事業所を持つNPO法人と一般社団法人とで運営されている。NPOは高齢者や障がい者らを対象に介護保険で運用。設立当初の理念に沿って利用者計200人余りの「心のケア」をする社団の方は三浦さんが事実上一人で担当し、同市平野区の事務所を拠点に毎日、各施設入所者や在宅利用者を回る。

NPOが確保して単身者用に提供する区内の高層マンションの一室に5年前から暮らす高島幸一さん=仮名(74)=は、三浦さんが訪れるとホームこたつで本を読んでいた。「要介護1に認定されたけど元気や。今日はヘルパーが掃除に来てくれた」。三浦さんは家具がほとんどない室内の様子を見渡し、「きれいになりましたね。ヘルパーと話は合いますか」と尋ねる。

高島さんは38歳の時に長男を病気で亡くしたのがもとで離婚。63歳まで建物の内装の仕事で一人暮らしをしていたが糖尿病が悪化して働けなくなり、釜ケ崎の簡易宿泊所住まいとなった。だがその金も底を突いて野宿していたところを行政の自立支援施設に救われ、生活保護を受ける中で三浦さんが世話するマンションに入った。毎朝散歩するくらいで人と話すこともあまりないという。軽い世間話にもうれしそうだが「寂しいが、もう死ぬだけや。若い頃にアスベスト扱っとったから死ぬときはそれやろな」とぼそりとこぼした。

三浦さんが聞く「ぼやき」は体調不良、金がないなどの悩みが多い。「どないにもならなくても口に出すことで気晴らしになれば」。高齢者は、苦労して育てたのに息子や娘が世話に来ないとよく愚痴をこぼすが、理由が自分の側にもあることを悟っている人もいる。

法人のグループホーム「あかんのん」に入所する96歳の老女は昔かたぎのしっかり者で体は弱っても口が達者だった。2人の娘にはきつく、ホームから夜中に「助けて」と電話してすぐ切るので長女が駆け付けると「なんやったかな?」という具合。一方で全く見舞いにも来ない息子については話をするたびに「立派な子やろ」と機嫌が良かった。三浦さんはそのまま受け止めた。大往生の際は家族に見守られ、施設で三浦さんも役僧を務めて葬式をした。娘は「母には泣かされ続けましたが、ここで良くしてもらえ、施設に預けたつらさも半減しました」と打ち明けた。

施設が入所者や家族、関係者の心の拠り所であることを三浦さんは目指す。老女も自室に仏壇を持ち込み、そこへ月参りする三浦さんに「私が死んだら、あんたが葬式してくれるんやろな」と納得していた。施設外で地域のケアマネジャーらからの要請で相談を受けることも多く、話を聞く相手からは自宅に置いたままの親の遺骨をどうすればいいか、自分が死んだらどうなるのか、葬儀はどうしてくれるのか、といった仏事に関する心配が訴えられる。

真宗にもかかわらず「ひと目で坊さんと分かるように」と剃髪し、仕事の際は常に作務衣姿の三浦さんはそれへの対応を「宗教的ケア」と言う。だが、その内実は儀礼という形や僧侶の外見ではなく、寄り添うこと自体を意味するのではないか。

(北村敏泰)

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