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ビハーラ21㊥ 誰をも排除せず受け止める

ビハーラ21の施設「あかんのん」の仏間には遺骨も置かれている ビハーラ21の施設「あかんのん」の仏間には遺骨も置かれている

ビハーラ21の介護施設に暮らす40代の男性は入居当初、事務局長の三浦紀夫さんが訪問すると「話なんか聞いていらんから、この体を取り換えてくれ」と訴えた。27歳で脳卒中になり半身まひが残っている。三浦さんは会うたびに「体は換えられないけど、その状態で生きていきましょう」と話すが、男性は「何しに来るんや!」と返す。しかし何度も訪ねるうちに「こちらの気持ちは分かってもらえたと感じます」と三浦さん。

男性は親しくない相手には特に憎まれ口をたたくのが癖だ。グリーフケアの実践研修で施設に来た女性には下品できつい言葉を投げ掛け、帰らせてしまった。「自分がさらし者になっているのではというつらさ、哀れんで来てほしくないという彼の気持ちの表れなのです」

以前から三浦さんが顔を見せると「犯罪者が来た!」と言うようになった。周囲のスタッフは「なぜそんなことを言うのか」とたしなめるが、脳の損傷で記憶が衰えて人名が覚えにくい男性が、当時話題になっていた「ロス疑惑」の関係者の名前から「三浦」を思い出しているのを三浦さんは理解していた。そして時には「あれ? サッカー選手かな」と口にする男性が「周囲には誤解されているけど彼なりに私と付き合ってくれている」と喜びを感じている。

福祉施設とはいえ、トラブルも時々ある。入所者が近所で物を壊したり窃盗などの犯罪で逮捕される事態も起きた。風体だけで「不審者」と見なされて警察に引っ張られたりすると、三浦さんはその人の普段の生活ぶりを警官に説明して引き取りに行く。だが問題があっても、基本的には追い出すことはない。それは「その人の言い分、社会で追いやられているその人の立場が分かるから。追い出してどうなるのか、それはこちらを守るだけのことでしかない」。

入所者には凶悪犯罪の前科がある刑余者も何人もいる。彼らを支援する活動に、「被害者には一生心の傷が残るのに、加害者が知らん顔をして暮らすのを助けるのか」と非難されることもある。しかし三浦さんは「この世に最初から犯罪人として生まれてきた人はいない。ちょっと縁が違っていたら、そのような人生ではなかったかもしれません。だから、隔離ではなく皆が理解し合い、仲良くやっていける世の中にしたい。それが仏さんの願いです」ときっぱり語る。

困難な状況の中でも世間のいろんな問題を受け止め、人々の苦しみを聞くことができるのは、「自分が真宗の僧侶だから」と確信する。「全ての人が煩悩にまみれている。阿弥陀さんの教えによって、自分が何かをしていると思っても大したことはできていないという自覚が生まれるのです」。その思いが、施設で実際に働く職員にも伝わる。

デイサービス管理者の廣畑亜貴子さん(39)は何も知らずに就職した際、施設内にある仏壇に違和感を持ち宗教に不信感さえあった。だがその前で葬儀が行われ入所仲間が集うのに接し、「誰をも排除しない」という「ビハーラ」の精神を知るにつれて「よその施設とは違う」と感じた。「困っている人がいたら駆け付け、できる限りの助けをする。その姿勢はお坊さんがボランティアから始めた事業だからでしょう」。自らも入所者の介護や送迎の合間を見つけては、入院する利用者の見舞いなどに回る。それは業務ではないが、「私がやりたいから」だという。

(北村敏泰)

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