PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
宗教文化講座
PR
中外日報宗教文化講座

ビハーラ21㊦ 人は全て縁の中に生きている

介護施設「あかんのん」は明るい雰囲気だ(大阪市平野区) 介護施設「あかんのん」は明るい雰囲気だ(大阪市平野区)

ビハーラ21の3階建ての介護施設「あかんのん」には20代の障がい者から90代の高齢者まで18人が暮らし、日中はここから福祉作業所に働きに行く入所者もいる。地域の認知症患者と家族が集まる「カフェ」も開かれ、事務局長・三浦紀夫さんは介護に悩む家族の訴えを傾聴する。デイサービス管理者の廣畑亜貴子さんら同所職員は15人だが法人のほかの施設職員も出入りし、そのようなスタッフを支えるのも“愚痴聞き役”の三浦さんの仕事だ。

高齢者が多いだけに入所者の死亡はたびたびある。それまで懸命に世話をした職員が無力感にさいなまれる「バーンアウト(燃え尽き)」に陥ることもある。特に独居者用住宅にいる人やデイサービスへの通所者の場合は誰もそばにいないときに亡くなるケースもあり、10年間に10件にも上った。ヘルパーが訪問すると部屋で倒れていて呼吸がない。仕事の経験が長くてもそれはかなりの衝撃だ。ヘルパーが119番とともに事務局に連絡してくると、三浦さんは何を置いても駆け付ける。「昨日来た時は元気だったのに」と蒼白な表情で警察の事情聴取に動揺するヘルパーに、「大丈夫や。あんたのせいやない」と声を掛ける。

このような「ケア者のケア」はスピリチュアルケアなど福祉の現場で重要視されるようになり、外部からの要請もある。ある施設の介護職の女性は担当する入所者がちょっと部屋を離れた隙に亡くなったことがショックで、何日もその部屋で線香をたき続けていた。三浦さんはその苦悩を受け止め、「葬式は私がきちんとするので安心してください」と話し掛けた。「彼女たちは長く付き合った入所者がどこでどう弔われるか知らないと不安が募るのです」。これもまさに三浦さんの言う「宗教的ケア」。ビハーラ21の施設で死去した人のほとんどは自分が葬儀を営み、外部で行われる場合も必ず参列する。

施設内の仏壇は葬儀で皆が集まり、普段はあまり拝まれなくても「見守ってくれている。身寄りがない人も自分が死んだら弔ってくれるという安心感につながります」と廣畑さんも言う。葬儀とは、「その人が極楽浄土へ往生するのを皆で見届ける場」と三浦さんは説明する。普段からそう入所者に話しており、通夜には故人の人生について語った上で「見届けましょう」と呼び掛ける。高齢入所者から自らの死後についての話が日常的に多いのも、それと呼応しているようだ。

三浦さんは以前、大阪のデパートで顧客向けの仏事相談員の仕事をしていた。父を亡くして葬式の大変さを知っていたからだが、グリーフケアを深く学ぼうとたまたま寺に行ってビハーラ21の創設者である真宗大谷派僧侶に出会った。何度か通ううちに「寺や坊さんは死んでからだけでなく、生きた人にもっと関わるべきだ」と考えを述べると、その僧侶はすかさず「そうだ。それなら君が坊さんになれ」と返した。研修を続ける中で「宗教的安息の場」という意味の「ビハーラ」という概念を知り、「自分がやりたかったのはこれだ」と感じて得度した。

「無縁社会」で「お年寄りは人の迷惑になりたくないと言われますが、誰も一人では生きていけない。人は全て縁の中に生きているということが大事で、老いや障がいもその気付きのきっかけになれば。仏教者はその中でいのちが連続していることを訴えるのが役割です」。ビハーラから仏門に入った三浦さんらしい言葉だ。

(北村敏泰)

夜回り前に欠かさない法要で皆が自分と向き合う

ひとさじの会⑥ ボランティアら心を寄せて

6月14日

ひとさじの会の夜回りには宗教者でないボランティアも多い。光照院でのおにぎり作りでは、「何か役に立ちたくて」と訪れた中年女性もいた。調理をしながら「あのおじさん、どうしてる…

寺で打ち合わせをする高瀬代表㊧と吉水副住職

ひとさじの会⑤ 今なお消えない後悔を糧に

6月13日

吉水岳彦・浄土宗光照院副住職の姿勢の原点は10年前の活動開始にある。野宿者の多い山谷地区にある寺の長男として生まれ育ち、子供の頃から「おじさんたちは身近な存在」だった。通…

段ボール小屋の野宿者におにぎりを配って話し掛けるメンバー

ひとさじの会④ 路上生活の背景に様々な要因

6月12日

その男性は公園から道路に出る階段にうずくまり、身じろぎもしなかった。ひとさじの会の夜回り配食で隅田川沿いの最後、コンビニやスナックが並び人が行き交う繁華街の間近で、そこだ…

PR

川崎無差別殺傷事件 「無敵の人」の誤用を考える

社説6月14日

SNSの闇 議論し、見識の蓄積を

社説6月12日

トリックはいけない 「令和」時代の改憲論

社説6月7日
宗教文化講座
  • 中外日報購読のご案内
  • 時代を生きる 宗教を語る
  • 自費出版のご案内
  • 紙面保存版
  • エンディングへの備え― 新しい仏事 ―
  • 新規購読紹介キャンペーン
  • 中外日報お問い合わせ
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加