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ハンセン病療養所④ 症状再発、逃げるように再入所

寺院や教会が軒を連ねる「寺町」(光明園) 寺院や教会が軒を連ねる「寺町」(光明園)

ハンセン病療養所で入所者たちの宗旨ごとの集まりはしかし、入所当初に葬儀向けに分けられたという事情から変容し、現在は信仰共同体になっている。20年以上にわたって真宗信徒らと交流してきた中杉隆法副住職は「いろんな催しを通じて互いの結び付きが強まっているのが分かります」という。邑久光明園には真言宗、日蓮宗、天理教やキリスト教などの寺院教会がある。それらが集中する区画は「寺町」と呼ばれ、国立施設内に宗教施設がある珍しい例だ。浄土真宗の会館には本願寺派と大谷派の僧侶が通って法要や葬儀を営み、普段は門信徒らが自主運営している。

金光教の教会を管理する榎本初子さん(76)は40年ほど前、たまたま教会に住み込みで働く仕事をきっかけに入信したが、今では毎朝、祭壇に水を供えて祝詞を奏上し、「心が清められる」と話す。12歳で発病して収容された時、親は周囲には秘密にしていた。比較的軽症で1959年に退所でき、園内で知り合っていた男性と大阪で結婚した。食堂ウエートレスや工場勤めなど仕事は多く、3畳のアパートにミカン箱だけという暮らしでも「世の中で働くことが楽しかった」。だが生活が良くなり会社の社宅に入った30代の頃、夫婦とも症状が再発する。

周囲の友人らはハンセン病のことを知らずに気遣って身の回りの世話までしてくれ、「それがかえって重荷でした」。顔に発疹が出ると出掛けられず、見舞いの人影が見えると鍵をかけて居留守を使った。園の診療所や大学病院に行き来し、社宅で次第に孤立する。体調悪化に労働組合の仲間が「労災を訴えて闘おう」と励ましてくれたが、居たたまれず「田舎に帰る」と偽って二人で園に再入所した。住所も告げず「水くさい」と怒られながら逃げるように。だが、友人が見舞いに田舎を訪ねて来たことを後で知った。自分が頑張って積み上げてきたかけがえのない人の輪を自ら壊さねばならなかった。「病気を伏せていたので差別はなかったけど、行く先も言えず、好意を裏切ったことがつらくて」と榎本さんは唇をかんだ。

あれほど嫌で「二度と戻らない」と思っていた園に帰って、榎本さん夫婦はほっとしたという。園内で仕事があり、間もなく病気も回復した。自治会の役務も引き受けるなどして平穏な生活が続いたといい、「あれからはアッという間でした」と振り返る。だが療養所で人生を送ることになってしまった状況の何が一番問題だったかを問うと「答えたくありません」と曇らせた表情に、社会の差別の“壁”に自らこもらざるを得なかった長年の苦悩が読み取れた。

「そりゃあつらい思いもしてきました」。再入所後、やはり子供はつくらなかった。「私らが産んでも誰も喜ばない。自分たちの代で終わりにしたい」と夫は不妊手術を受け入れた。しかし「いろんなことを乗り越えられたのは、ここで同じような苦労をしてきた人たちに支えられたから」。入所者は高齢化が進み、毎年10人以上が亡くなる。金光教信者も少なくなったが、春秋の例大祭には教師や園外の信者も茶話会に集まる。榎本さんはほかの宗教の人とも親しく付き合い、毎年の6宗教合同慰霊祭で担当も務めた。「私たちをつくってくれた天地金乃神によって日々生かされていることに、心からお礼が言えます。一人になっても教会を守らねば。神様は『心配する心で信心せよ』と教えています」

(北村敏泰)

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